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「動く薬局」を平常時も使用へ 岐阜薬科大が医療過疎地で実証実験

深津弘
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 災害時に被災地に駆けつけ、薬の調剤ができる移動薬局車両「モバイルファーマシー」。災害時しか使用が認められていない「動く薬局」を平常時の地域医療にも活用できないか――。岐阜薬科大学(岐阜市)は来月、国の許可を得て全国初の実証実験を始める。医療過疎地とされる山県市北伊自良地区で住民への有用性を確かめ、規制の見直しにつなげて車両の普及に弾みをつけたいという。

 モバイルファーマシーはキャンピングカーを改造した車内に、医薬品の棚や、一度に服用する量の薬を一つの袋に分包するなど調剤に必要な機器を備える。2011年の東日本大震災で病院や薬局が被災したことをきっかけに導入され、熊本地震(16年)や九州豪雨(20年)などで使われた。現在、全国で薬剤師会や大学などが20台ほど所有しているとみられ、岐阜薬科大は17年に全国の薬科系大学で初めて導入した。

 実証実験が行われる北伊自良地区には診療所が1カ所あり、医師が週2回、出張診療に訪れている。近くに薬局はなく、医師が手持ちの限られた薬を処方し、調剤や服薬指導を含めて医師の負担が大きい。

 計画では、10月から半年間、岐阜薬科大の車両が薬局の役割を担い、診療所の近隣駐車場に出向き、同行する大学の薬剤師が調剤する。診療所の医師は幅広い薬の処方が可能になり、受診した患者も薬の専門家である薬剤師の服薬指導や副作用のチェックなどを受けることができるという。医師や患者からの聞き取りやアンケートで現状と比較し、有用性を検証する。

 同大の林秀樹教授(臨床薬理学・災害医療)によると、法令により、薬剤師は原則として薬局以外の場所で調剤できず、モバイルファーマシーは薬局として認められていないため平常時には活用できない。同大が昨年、全国の薬剤師会と薬学部がある大学を対象に導入状況を調査し、導入しない理由を尋ねたところ、資金面や人員以外に平常時の利用制限を挙げた回答も多かったという。

 このため「平常時の活用方法を見いだし、規制緩和につなげたい」と、国に医療過疎地での実証実験の計画を提出したところ、8月に厚生労働相から特例として認められた。林教授は「薬剤師がいると患者は服薬や副作用の相談ができ、医薬分業のメリットを享受できると思う。今回の実証実験が規制の見直しにつながり、車両の普及の後押しになって災害への備えが進むことを期待したい」と話す。(深津弘)