36年間ほぼ毎日「自撮り」した 13000枚の顔で写真集を出版

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勝又ひろし
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 写真家の土田ヒロミさん(82)は、46歳だった1986年7月のある日、鏡を見て「白髪が目立ってきたな」と感じた。自分の顔を毎日撮影して、どう年をとっていくか記録したら面白いかも、と撮影を開始した。カメラは何千分の一秒という速いシャッタースピードで被写体を止められるが、緩慢に進む老化は撮れない。量を集積していくことでほんのわずか差が見えてくる。

 それが現在まで36年にわたって続き、約1万3000枚の自画像が蓄積され、それを写真集にしてしまった。「AGING 1986―2021」(ふげん社、限定300部)で、約30センチ四方、84ページのハードカバーだ。左ページに日付、右ページには横18×縦21コマで顔写真が時系列で配置されている。86年7月18日から21年12月26日まで。忘れた時や、データの破損もあるので毎日ではないが、めくってもめくっても土田さんの顔だ。

 福井県出身で、化粧品メーカーの研究者として商品開発をする傍ら写真学校に通い、71年に写真家として独立。日本の土俗性、群衆文化、産業考古学などをテーマに作家活動を続け、土門拳賞など数々の写真賞を受賞、海外での評価も高い。広島の被爆者の遺品を撮影したシリーズにも力を入れており、9月24日から米カーネギー美術館での展示が決まっている。

 「1冊の写真集に収められた写真の数はギネス級じゃないでしょうかね」と土田さんは笑う。ただ数が多いだけではない。ページをめくる、つまり年をとるほど版面から感じられる力、圧が明らかに弱っていくのだ。

 「写真を一点一点見ていくのは大変だから、面でみてもらうといいんです。個人的なビッグデータの集積から変化を感じ取ってほしい」

 半ば戯れに始めた撮影だが…

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