第127回水源をロシアに奪われた前線の街 命綱の隠し井戸「住所書かないで」

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ミコライウ=国末憲人
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 ロシア軍の激しい攻撃に日常的にさらされているウクライナ南部の中心都市ミコライウは、半年近くにわたって飲料水を確保できない街となっています。水道水は、飲めないほど濁ったまま。水源をロシア軍に占領されているため、修復はままなりません。市民の半数以上はすでに街を離れ、逃げられないまま困り果てるお年寄りたちの生活を、井戸水を配布するボランティアたちが支えています。9日、現地に入り、実情を見ました。(ミコライウ=国末憲人

 9月上旬の午前9時前、ミコライウ中心部の住宅街に、大型ペットボトル数本ずつを抱えた市民が集まり始めた。やがて、1トンタンクに水を満載したワゴン車が到着。人々は順番に、ホースからほとばしり出る水をボトルに詰める。

 「飲むのにも、料理するにも、この水は不可欠。家族5人だから、毎日来ても足らないよ」と、ボトル10本を手押し車で持ってきたナタリア・メトビエクさん(67)。自宅の水道の水はずっと黄土色。下水も詰まって、下水管を交換せざるを得なかったという。

 「ここから逃げようにも行くところはないし、地元を離れたくもない」

 10時には2トンを積んだ2台目が着き、40分間ほど給水の列が続いた。

 ミコライウの水源は、隣接するヘルソン州を流れるドニプロ川。2月末にロシア軍に占領されると、水が濁るようになった。給水管が破損したためとみられるが、ウクライナ当局は現地に入れないでいる。

ボランティアが命綱

 この窮状を救うため、郊外の井戸からくんだ水を配布するサービスを、市内の各ボランティア団体が連日展開している。この給水所は、語学教室「ゴンチャレンコ・センター」が運営する市内10カ所の一つ。飲料水を確保できない市民にとっての命綱となっている。

 同センターのゾヤ・パブレンコ事務局長(62)は「この状態がいつまで続くのか予想できない。水以外の食料や医薬品に欠乏はないのが幸いだが」と話す。

 水をくむ井戸を見せてもらった。最前線のヘルソン州に近い郊外の一軒家。ボランティアの一員で消防士のスラバさん(60)が30年前に家を建てた時に、業者に掘ってもらったという。以来、地下70メートルから湧く水は枯れたことがない。「近所からもくみにきて、いつもわけていますよ」。もっとも「住所は絶対に公開しないで」。水の確保は今や戦略的な意味を持ち、ロシア軍の攻撃対象になりかねないからだ。

 市内の井戸だけでは足りず…

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