またダメだったか――。

 助教の任期が切れる2022年が近づいていた。

 30代後半の男性研究者はその数年前から、国立大学の准教授職に応募しては不採用となることが続いていた。

 同年代の中では恵まれた立場だった。博士号を取った後、20代で助教に。研究に打ち込み、それなりに成果もあげていた。

 それでも次の行き先が決まらず、「そろそろ行きたい大学以外にも応募しなくては」と思い始めるようになっていた。

 男性には実は、頭から離れない光景があった。

 19年冬、アメリカで開かれた学会に参加したときのことだ。

 高級ホテルのロビーで、知り合いの中国出身の教授が「一緒に研究しましょう!」と呼びかけていた。帰国して、新しい研究センターを作るという。

 中国語だったのであまり理解できなかったが、留学中の中国人学生や若手研究者が大勢集まり、目を輝かせて聞いていた。

 大学の方から海外に出向き、採用活動をするなんて。大きな衝撃を受けた。

 そしてやる気と希望にあふれる中国の研究者の様子を見て、焦りを覚えた。

 このまま日本は、置いていかれてしまうのではないか――。

 帰国する飛行機の中で、ふと学会で見かけた日本人研究者たちを思い出した。

 焦りは、さらに強くなった。

 日本から中国へ渡る若手研究者が相次いでいます。その背景を探ると、日本の研究力が低下しているさまざまな要因が浮き彫りになってきます。

 女性限定公募が増え、うっぷん…

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