パキスタン洪水、広島のNPOが救援募金開始 「目を向けて」
大雨による洪水の被害が深刻化し、国土の約3分の1が冠水したとされるパキスタンに対し、日本赤十字社が海外救援金の募集を開始するなど国内の団体が支援に乗り出している。現地の学校や診療所の支援に携わってきた広島のNPO法人「ANT―Hiroshima」は16日から、救援募金の受け付けを始める。
国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、9月13日現在、約1500人が死亡し、負傷者は約1万2700人、家屋倒壊は約57万件、家屋損傷は約119万件、家畜被害数は約90万8千件。シンド州、バルチスタン州、カイバル・パクトゥンクワ州の被害が特に大きいという。
国連などによると、雨期が始まった6月中旬以降の降雨量は、バルチスタン州やシンド州では過去30年の平均の5・5倍を超えた。影響を受けた人は全土で約3300万人にのぼる。政府は8月26日、国家非常事態を宣言した。
国連のグテーレス事務総長も国際社会に1億6千万ドル(約220億円)の緊急支援を求め、各国に気候変動の対策を要請した。
「ANT―Hiroshima」理事長の渡部朋子さん(68)は「日本であまり報じられない。どうすれば関心を持ってもらえるか」と気をもんできた。
パキスタンでの支援は2002年に始め、小さな診療所をつくって女性の出産などを手助けしてきた。05年の大規模な地震では、ムザファラバードで「SADAKO小学校」に絵本(ウルドゥー語の「サダコの祈り」)を送り、学校のトイレ改修などの支援も。スタッフが1年滞在し、自身も3回現地へ赴いた。
渡部さんは今、連携してきたオーストリアの半官半民組織「HOPE’87」のショアイブ・ハイダー・パキスタン支部長と日々連絡を取り合っている。カイバル・パクトゥンクワ州の学校で校舎が倒壊し、子どもたちががれきの中で勉強を強いられるなどしており、現地の写真や映像も届いている。
来年は広島で主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれる。渡部さんは「パキスタンの洪水は気候変動の影響も指摘される。CO2を排出している国がもっと関わって動かないと。広島からメッセージを発信し、目を向ける責任がある」と話す。
募金は郵便局の振替口座で募る。「パキスタン洪水支援金」と明記し、口座番号01300―8―90360、口座名は「NPO法人 ANT―Hiroshima」へ。「HOPE’87」のパキスタン支部を通して、学校を支援するために活用してもらう。
問い合わせは、ANT―Hiroshima(082・502・6304)。(編集委員・副島英樹)