シャッターの向こうから女性の声、かけつけた男性 銀行員は動いた
営業時間が終わり、静寂に包まれた銀行支店。シャッターを隔てたATMコーナーから、なぜか女性がひとりで話し続ける声が聞こえる――。不審な状況を見過ごさず、還付金詐欺の被害を水際で防いだとして愛媛県警今治署は15日、伊予銀行今治南支店の行員2人に感謝状を贈った。
今月8日午後5時過ぎ。行員の越智睦美さん(48)は支店で机の上を片付けていた。シャッターで遮られたATMコーナーから女性が話す声が聞こえてきた。内容は聞き取れないが、もう数分以上。
気になって、ATMを映すモニターを見ると、高齢の女性がスマートフォンを耳に当てながらATMを操作していた。ほどなく夫とみられる男性が現れた。2人はスマホを持ちながら必死になってATMを操作し続けた。
「これはおかしい」と感じた越智さんは、店内にいた今村高弘支店長代理(51)に声をかけ、ATMコーナーに入った。男性が驚いた様子で「行員が来たので切ります」と言ってスマホの通話を切った。2人は少し興奮状態に見えた。「どうされましたか」とやさしく呼びかけ、今村さんと一緒に話を聞いた。
2人は今治市内に住む70代の夫婦だった。この日午後4時半過ぎ、「市役所の保険課」を名乗る男性から電話があり、「納め過ぎた保険料の払い戻しがあります」「急いで手続きしてください」などと言われたと話した。
今村さんはすぐに夫婦の口座を確認した。お金はまだ動いていなかった。「ATMに着いたら電話するように」と夫婦が指示された番号は県外の局番だった。
越智さんは取材に、「(還付金詐欺の話は)新聞などでよく見るが、こんな身近にあるんだ、人ごとでない、とつくづく思った。普段と違うことがあったら、声かけをしていかないといけない」と話した。今村さんは「被害がなくて胸をなで下ろした。ATMで還付金を受け取れることは絶対にない」。
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