「死にそうだ」叫んだカメルーン人男性 地裁、救急搬送の義務認める
入管収容施設で亡くなったカメルーン人男性をめぐる訴訟の判決で、水戸地裁は16日、入管職員に救急搬送を要請すべき義務があったと認めた。全国の入管施設では、2007年以降に17人の外国人が病気や自殺で亡くなったことが明らかになっており、施設内の医療体制のあり方が繰り返し問われてきた。
今回の判決を受けて記者会見した原告弁護団の浦城知子弁護士は「(入管施設であっても)社会一般と同じ水準で医療を提供しなければならないことが示された」と評価した。
長崎県の大村入国管理センターでは19年、仮放免を求めてハンガーストライキをしていた40代のナイジェリア人男性が餓死した。
同センターはハンストを把握した後、外部の病院を受診させて点滴をしたが、まもなく男性が治療を拒否するようになり、その後、男性は死亡した。
この問題に関する国の報告書は、食事や治療を拒む収容者には強制的な治療が考えられると説明。ただ、こうした治療には医師の監督のもとで長時間の栄養補給を続けることが必要なのに、当時は常勤医が確保できていなかったため、強制的な治療は「困難だった」との見解を示した。
昨年3月には、名古屋出入国在留管理局で収容中のスリランカ人ウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が死亡した。
国が昨年8月にまとめた最終報告書は、死亡の約3週間前の尿検査で腎機能障害の疑いがあり、追加検査が望ましかったのに検査は行われなかったと説明。背景として、週2回だけの非常勤の医師しか配置できていなかったことをあげた。
入管に収容中の死亡事案をめぐっては、ウィシュマさんのケースなど、国の責任を問う複数の訴訟が起こされている。
死亡事案が起きるたびに、国は再発防止策を掲げてきた。
特に重要とされているのが継続的に体調を管理することができ、休日を含め急変時にも対応しやすい常勤医師の存在だ。現在は東日本や大村では常勤医師を確保できたが、名古屋は不在のままだ。非常勤医師の増員はしたが、入管庁幹部は「待遇などの条件が良いとはいえず、常勤医師の確保はなかなか難しい」と頭を抱える。
常勤医師の確保以外にも、名古屋での死亡事案以降は再発防止に向けた取り組みが加速した。看護師ら医療スタッフの増員▽原則として施設入所後10日以内に健康診断▽救急対応のマニュアルを作成▽診療時には原則通訳の手配――などが実行されたという。
カメルーン人男性の死亡について、国がまとめた報告書では常勤医師の確保を改善すべき点に挙げていた。だが7年後、ウィシュマさんが命を落とした。浦城弁護士は、この日の会見で「医師の拡充などを唱えながら、同じことが繰り返されている」と批判した。
入管庁によると、16日現在、全国9施設に207人が収容されている。(平畑玄洋、久保田一道、田内康介)
「死にそうだ」 30分以上苦しんだ男性
「I’m dying(死にそうだ)」
死亡前日の2014年3月29日、午後7時過ぎ。茨城県牛久市の東日本入国管理センターに収容されていたカメルーン人男性は、ベッドから転げ落ちた後も、床の上で叫んでいた。
男性が苦しむ様子は、同セン…