「規制の虜」の危険、常に 退任する更田氏が振り返る規制委の10年
政府・与党や経済界から、長期化する原発の審査について「効率化」を求める声が強まっています。10年前、原発事故をふまえて発足した原子力規制委員会の委員に就き、この5年間は委員長を務めてきた更田豊志さん(65)が9月に退任します。退任を前に、東京の原子力規制庁で話を聞きました。
ふけた・とよし 1957年生まれ。87年、東工大大学院博士課程修了、日本原子力研究所入所。原子炉の安全研究に従事。日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究部門副部門長などを歴任。2012年9月、原子力規制委員に就任。14年9月から委員長代理、17年9月から委員長を務めている。
事業者の安全意識は生まれ変わったか
――この10年で達成できた点と、達成できなかった点は?
「職員の姿勢は大きく変わったと思います。だんだん上下関係にとらわれず意見が言えるようになってきた」
「一方で、委員会の中での議論は活性化されたとは言えない部分がある。本来であれば、例えばある委員が別の委員に対して異論を投げかけるとか反論するというのは、もっとあっていいと思います。その分野を得意とする委員が発言してしまうと、ほかの委員はあまり反論しないというような雰囲気がまだあるのはちょっと残念だと思っています。(山中伸介)新委員長は非常に柔軟な人なので、むしろ委員会内の議論は活性化するかもしれないと期待しています」
――事業者の安全意識は生まれ変わったと言えるでしょうか。
「生まれ変わってはいないで…
- 【視点】
東日本大震災で起きた東京電力・福島第一原発事故への反省から、政府の原発規制組織の独立性を高めようとできたのが原子力規制委員会です。政治との関係は「こっちが圧力だと思っちゃった瞬間に圧力になる」という更田氏。至言です。 最近まで事務局トッ