ティムールの古都から届いた細密画 アフガニスタンに思いはせて

中野晃
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 【兵庫】アフガニスタンの伝統文化に触れて、現地の人々の窮状に思いをはせて欲しいと、「宝塚・アフガニスタン友好協会」の西垣敬子さん(87)が、地元の宝塚市細密画展を開く。ティムール朝の古都から、この夏に国際郵便で届いた手仕事の結晶だ。

 アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンが昨年8月に復権して1年余り。西垣さんのスマホには連日のように、長年交流してきた現地の友人や知人からSNSで生活の窮状を訴えるメッセージが届く。

 北西部の中心都市ヘラート。15世紀から伝わるとされる伝統文化の細密画を大学で教えていた旧知の教授は、タリバンによる芸術活動への抑圧に耐えられないと、この夏、家族とともにドイツに逃れたという。

 一方、ヘラートに残り、伝統文化を守ろうと尽力する人々もいる。西垣さんは人々の誇りが宿る細密画を日本でも紹介したいと、ヘラート大学教員のシュワイブさんに依頼し、作品を送ってもらった。シュワイブさんの手による約30点の細密画は、ペルシャの物語を土台にしたという人物画や抽象的な図柄で、鮮やかな顔料で細かく丁寧に描かれている。

 ヘラート大で細密画を学んで卒業した3人の若い女性の作品計18点も同封されていた。みんな仕事につけず生活に困窮しているが、大学で時折指導を受けながら技術の向上に励んでいるという。

 西垣さんは1994年からアフガ二スタンを何度も訪問し、女性の教育や自立を支援してきた。2007年に女子寮を作った東部ジャララバードの大学教員からは、少しほっとする知らせが届いた。寮はタリバン復権後に封鎖されていたが、今年2月から男女を分ける形ではあるものの授業が再開され、女子寮にも学生の姿が戻ってきた。ただ、中学・高校にあたる女子の中等教育は依然、中断されたままだという。教員からは給与の減額や支払いの遅延など経済的な窮状を訴えるメッセージも届く。

 タリバンに対する国際社会の経済制裁でアフガンは深刻な財政難にあるとされる。西垣さんは「財政が乏しい中、タリバンのもとで女子教育はいちばん後回しにされ、もっともしわ寄せを受けています」と話す。

 ヘラートから届いた細密画約50点を展示する「古都ヘラートの美 アフガニスタンの細密画」展は9月30日~10月4日、阪急宝塚南口駅前の宝塚市立国際・文化センターで。いずれも午前10時15分~午後6時(最終日は午後3時まで)。入場無料。問い合わせは市国際交流協会(0797・76・5917)。(中野晃)

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