中国のノーベル賞「今年は…」 専門家が考える強さの秘密と落とし穴

聞き手=藤波優、水戸部六美、玉木祥子
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 今年のノーベル賞の発表が、10月3日から始まる。日本の研究力が国際的に下がる一方で、中国の存在感が高まっている。躍進の背景には何があるのか。中国の科学政策に詳しい笹川平和財団の角南篤理事長に話を聞いた。

 ――中国は予算も研究者数も桁違いです。研究力はやはり「金次第」なのでしょうか。

 資金の潤沢さというより、まずは制度ありきです。1980年代後半から国がトップダウンで科学技術・イノベーション改革を推し進めましたが、予算を投入するというより、自由に研究できる制度を作り、競争を重視しました。若い研究者でも実力があれば昇進できるし、研究費もとれる。留学から帰ってくると、優遇されて研究費がつき、自分のプロジェクトができる環境を作ったのです。

 ――なぜそんなことが可能に?

 大学改革が大きいです。中国の大学のマネジメントは欧米式で、学長をはじめとした経営陣に多くの裁量を与え、政府は邪魔をしないんです。実力があれば昇進し、給料も上がる。優秀な人は成果をあげやすくなります。

 ――一方で日本の研究力が国際的に低下していますが、課題はなんでしょう?

 中国には、研究者が自分で提案してやりたいことをやれる環境がありました。今の日本でもそうした環境を整えていく必要があります。

 ――日本でも、世界と伍(ご)する研究力を持つ大学をつくろうと、10兆円規模の「大学ファンド」という大きな政策が動き始めました。

 大学ファンドは、政府主導で大学改革を掲げた初めての大きな政策です。これをきっかけに少しずつイノベーションが生まれるようになると、研究環境も変わるのではと期待しています。これが最後のチャンスです。

 ――日本が中国から学ぶとしたら、どんな点でしょう。

 今の中国がモデルになるかどうかはわからないです。これからの中国の大学の競争力は、世界トップレベルの研究と連携を続けられるかどうかにかかっていると思います。

 今は、中国を巡る国際環境が欧米や日本の大学との連携を強めていくのを難しくしています。

 ――政治問題が研究に影を落としてしまっているということですね。

 中国をとりまく国際環境が変化し、政治と科学技術を別のものとして扱わなくなっています。米中の先端科学技術分野での対立が鮮明になり、言論の自由に、国家・政治が介入してきたことで、中国の研究環境が大きく変わってきているのを感じます。

 ――では、中国から学ぶべきことはないのでしょうか。

 日本が中国から学ぶとすれば、長期にわたって科学技術に投資をし、制度改革もスピード感をもって大胆にやるという点です。また、「千人計画」はいろいろ問題視されていますが、「人材を重視する」という点は学ぶことが大きいと思いますね。

 ――今年のノーベル賞で、中国が受賞する可能性について、どう考えていますか?

 今後いつ受賞者が出てもおかしくはないですが、今年はどうでしょうか。(聞き手=藤波優、水戸部六美、玉木祥子)