やまゆり園事件踏まえた国連委員の問いかけ 進まぬ地域生活への移行

有料記事

森本美紀
[PR]

 障害者権利条約をめぐる日本の取り組みがどのような状況なのか、国連による初の対面審査が実施された。障害のある当事者でつくる認定NPO法人「DPI日本会議」の副議長を務める尾上浩二さん(62)は、審査でニュージーランドの委員が、障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市)で利用者19人が刺殺された事件を取り上げて質問した言葉が忘れられない。

 「障害を持つ人が、日本では施設で暮らす人がまだ多いと聞いています。やまゆり園事件は大変な悲劇でした。我が国のニュージーランドと比べると大変残念です。やまゆり園事件を経て、このような施設で暮らす人たちがたくさんいることについて考え直したことはあるでしょうか。政府はどのような資源配分などをすることによって、(権利条約の)19条にしたがう形で脱施設化、地域での生活への移行を支援していく考えでしょうか」

 日本の現状を鋭く突く場面だった。

 この委員は、自らも知的障害のあるロバート・マーティンさん。尾上さんによると、マーティンさんは子ども時代のつらい施設入所の経験を原動力に、施設の閉鎖に力を尽くしてきたという。

 19条は「自立した生活及び地域社会への包容」を定めている。障害のない人との平等をもとにして、住む場所を選び、どこでだれと生活するかを選択する機会があることや、特定の施設で生活する義務を負わないこと、地域社会での生活を支援し、地域社会からの孤立・隔離を防止するために必要な在宅サービスなどを利用する機会があること、などを求めている。

 日本が障害者権利条約を批准したのは2014年。だが、尾上さんは、施設から地域での生活へと移る「地域移行」への取り組みについて、「批准以降、動きが加速するどころか、減速しているのが実情」とみる。

 国はこれまでも、施設入所者の地域移行を進めてきた。しかし、近年は移行者数が減少傾向だ。厚生労働省によると、09~12年度は毎年5千人前後が移行していたが、その後2千人台で推移。18年度は1525人にまで減った。

 背景には、重い障害のある入所者の割合が高まり、高齢化が進んだことがあるとみられる。親が介護の負担などから施設での生活を望むといったこともある。

 地域移行が進みにくい一方、全国の施設の入所者は約13万人(19年3月末時点)に上る。

代替機能と資源が地域に不足

 尾上さんは「施設が必要とさ…

この記事は有料記事です。残り2887文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
【10/18まで】有料記事読み放題のスタンダードコースが今なら2カ月間無料!