安倍元首相の「国葬」、広島県内の自治体は対応割れる 大半は検討中

国葬

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 【広島】27日に営まれる安倍晋三元首相の国葬をめぐり、県内の自治体で当日の対応がわかれている。朝日新聞の取材では、県と福山市など5市町が庁舎に半旗を掲揚する方針なのに対し、廿日市市など6市町は掲揚しないことを決めた。一方、広島市をはじめ12市町は「検討中」とした。国葬の実施について世論で賛否が割れるなか、慎重に対応を見極めようとする姿勢が目立つ。

 岸田文雄首相は国葬を行う理由に、安倍元首相の在任期間が憲政史上最長の8年8カ月だったことなどを挙げる。弔意の強制になるとの懸念には「国民一人ひとりに弔意を強制するものではない」と説明している。

 朝日新聞が20、21日、県内の23市町に、庁舎での半旗掲揚や職員への黙禱(もくとう)の呼び掛けをするかといった弔意を表す方法を尋ねた。

 半旗を掲揚する方針を明らかにしたのは、県のほか、福山市と坂、熊野、府中、海田各町。2018年の西日本豪雨の被災地となった坂町は、安倍氏が避難所となった町民センターを視察したことを挙げ、「土砂災害現場を訪れて砂防堰堤(えんてい)づくりなどに尽力してくれた」として掲げる。熊野町も「豪雨災害で2回来てもらい、復興に尽力してもらった」として、役場と防災交流センターに掲げる方向で検討している。

 一方、廿日市や江田島、大崎上島など6市町は半旗を掲げないと回答した。対応の理由には「役所で話し合って決めた」(江田島市)や「国からの要請がない」(大崎上島町)といった声が上がる。

 今回、多数を占めたのは検討中といった回答だ。「市民の意見や世論をしっかり見極めて判断したい」(東広島市)など、直前まで対応を模索する市町が多くみられた。西日本豪雨の被災地でもあった呉市は、安倍氏の7月の葬儀にあわせて市役所などに半旗を掲げたが、今回の対応は検討中という。

 異例の行事への対応に戸惑う自治体もある。国は東日本大震災が発生した3月11日に合わせ、毎年、弔旗の掲揚や黙禱の協力について閣議了解をとり、県も市町に黙禱の呼びかけなどを通知している。今回はこうした通知が来ていないといい、安芸太田町は「判断がしづらくなっている」と明かす。対応は「直前に決まると思う」。

 三次市では一昨年の中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬の際、半旗は掲げたが黙禱はしていないという。過去の事例を参考に検討を進めているという。

 職員らに黙禱を呼び掛けると回答した自治体はなく、県と廿日市、江田島など14市町は黙禱の呼びかけを見送ることを決めた。「個人には、それぞれの考え方がある」(庄原市)、「個人への働きかけになるため行わない」(東広島市)といった理由が挙がる。

 このほか、県教育委員会は市町教委や県立学校に対し、国葬当日、学校で弔意を表すことを求めないことを決め、広島市教委も同様の方向で検討している。

     ◇

 県内の首長では、湯崎英彦知事と松井一実広島市長、高垣広徳・東広島市長、吉田隆行・坂町長の3市町長が国葬に出席する。

 松井氏は県市長会の会長だが政令指定市長の立場で出席するため、同会副会長の高垣氏が同会を代表して出席。吉田氏も県町村会代表として出席する予定だ。

 湯崎、松井両氏の費用は公金でまかなわれ、高垣氏は県市長会、吉田氏は県町村会が負担する。

 湯崎氏は出席の理由を「県として弔意を表すため」と説明。広島市は松井氏の出席について「国の行事として正式に案内があったため」などとしている。

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