大規模太陽光発電 事業開始から8年で認可 岩手・大船渡

宮脇稜平
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 山中に大規模な太陽光発電施設を造る計画が、岩手県大船渡市で進められている。計画が動き出してから8年余りの年月を経て、東北経済産業局が今年4月に計画を認可。土地を持つ市は事業を推進する一方、地元住民の間には根強い反対もある。

 「質問が長すぎるぞ」「人の話を聞けないのか」

 大船渡市の旧吉浜中学校の体育館で、4月下旬に開かれた太陽光発電施設の建設についての説明会。説明の場は2年ぶりで、集まった住民約60人は賛成と反対に分かれ、意見をぶつけ合った。

 計画は、「自然電力」(福岡)が市内の荒金山と大窪山に太陽光パネルや発電所を設置するもの。事業面積約95ヘクタールの大部分は市有地だが、同社が所有する釜石市内の土地も含まれる。約7万7千枚のパネルを設置し、発電出力は35・2メガワットに達する。

 同社が、市に事業の申請をしたのは2014年1月。市は、地元の同意を条件に土地の賃貸証明書を発行。同社は事業を進めるうえで必要だった地区の代表者らの同意を得て、16年4月に市と賃貸借契約などを結んだ。

 その後、住民からの反対活動を受け、当初予定していた荒金山でのパネル設置を断念。変電所だけを建て、発電所とパネルは近くの大窪山に設けることにして事業を進めてきた。

 同社は20年から21年にかけて2度、計画の変更を東北経産局に申請し、今年4月に認可が下りた。住民の理解を得るため、パネルの設置面積を2割縮小し、生態系を壊さないように湿地を避けてパネルを置くことを決めた。

 今後、県が大規模な開発事業の前に行う環境アセスメントが必要かどうか、同社から書類を受け取って60日以内に判断。環境保全課によると、書類はまだ受理しておらず、工事開始の時期は未定という。

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 計画が進むなか、地元住民は「太陽光発電所建設に反対する会」を結成。同社が初めて説明会を開いた9カ月後の19年12月、発電所の建設予定地である吉浜地区にある世帯の7割以上の反対署名を集めて戸田公明市長に提出するなど、反対運動を続けてきた。

 反対する会の最大の不安は吉浜川への影響だ。工事によって川の水量が減り、農作物が被害を受けたり、逆にパネルの設置で山の保水力が落ち、大雨時に氾濫(はんらん)の危険性が高まったりする恐れがあるとする。

 副会長の横石善則さんは「吉浜の住民の多くは1次産業に関わっており、吉浜川が我々の生活を支えている」と懸念を示す。

 一方、同社は建設予定地はもともと牧場だったうえ、パネルの設置面積は川の流域面積の1%に満たず、水源に影響のある大規模な工事は不要と説明。専門家との調査で保護すべき野生動物は確認できておらず、パネルは希少な植物を避けて設置するという。

 住民と同社の間では、市が事業を進める条件とした地元同意に関しても認識の違いがある。

 同社は4月の説明会で、地元同意が必要なのは荒金山の開発についてであり、計画の変更で新たに事業用地になった大窪山については不要だと説明。広報の担当者は「地元で賛成と反対が割れるのはよくないと考え、同意を求めないという形にした」と述べた。

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 住民と同社の間で市の対応は揺れてきた。

 市は当初、反対署名の提出を受け、「住民理解が得られたとは言えず、土地を貸せる状況ではない」としていた。

 しかし、計画が進むにつれ、事業を後押しする姿勢に転換。太陽光発電が地球温暖化の抑止につながることに加え、同社の下請けに入る地元の事業者からの税収や発電所の固定資産税など、約40億円の経済効果が見込めるからだ。

 ただ、市をめぐって問題が発生。反対する会が、土地の賃貸借契約の延長に関わる公文書の日付を変えたとして、戸田市長らを虚偽有印公文書作成罪などの疑いで刑事告発。県警は今年9月1日付で、市長や市職員ら計7人を盛岡地検に書類送検した。

 反対する会の小松テイ子会長は、書類送検を受けて21日に開いた会見で、「不可解な行政手続きが行われ、7人もの関係者が送検されたことは、事件性が強まったと理解している」と改めて反対を表明。

 戸田市長は昨年5月の議会で改ざんを認めており、「事務手続き上、契約の継続性を確保するためやむを得ず行ったが、事務処理として不適正だった」と謝罪。だが今後、計画が進められることに理解を示しており、両者の溝は埋まらないままだ。(宮脇稜平)