カズワン最後の無線 淡々と観念した船長の声に、同僚は何度も叫んだ

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佐野楓、島崎周
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 あの日聞いた、船からの最後の無線。男性はいま、事故があった5カ月前を思い返す。

 「海の模様が悪いから、昼からはもうだめだな」

 知床半島を抱える北海道斜里町。4月23日正午前、観光船の運航会社「知床遊覧船」の乗組員らが、そんな会話を交わしていた。

 乗員・乗客26人を乗せた「KAZUⅠ(カズワン)」が、ウトロ港を出港しておよそ2時間弱が過ぎた頃だ。

 同社で駐車場係のアルバイトをしていた男性は、乗組員らの話を耳にし、豊田徳幸船長の携帯電話を鳴らした。カズワンの位置を確認するためだった。悪化する天候も気がかりだった。

 電話は通じなかった。3回かけてみたが、結果は同じだった。

 事態が一変したのは、午後1時10分すぎのことだ。

 「船が傾いている」

 カズワンから助けを求める無線が入った。

 だが当時、知床遊覧船の事務所内にある無線は、アンテナが折れて通じなかった。

 無線を聞いて一報を知らせてくれたのは、同社からほど近いところに事務所がある同業他社「ゴジラ岩観光」の従業員だった。従業員は無線を受け、海上保安庁に118番通報した。

 男性は慌てて、ゴジラ岩観光の事務所に向かう。

「もうだめです。もうバッテリーが落ちる」

 事務所に着くと、無線機を手に取ってカズワンに呼びかけた。

 豊田船長が応じた。

 「船の前から浸水して、エンジンが止まった」

 「はあ?」…

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