失速の春場所後、全取組を見返し気づいた弱点 高安が胸に刻んだ教訓

加藤秀彬
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 (大相撲秋場所12日目 ○高安―●若隆景)

 鬼気迫るかち上げだった。

 高安にとって、優勝争いに残るためには、絶対に負けられない3敗同士の対決。

 今年春場所の優勝決定戦で敗れた若隆景に対し、攻めると決めていた。

 立ち合い。

 右から猛然とぶつかった。

 相手の体をのけぞらせると、激しい突っ張りで土俵際に追い込み、引き落とした。

 「後手にならないよう。思いっきり踏み込めた」。前日まで1敗だった玉鷲、2敗だった北勝富士、錦富士がそろって敗れるなか、元大関らしい力強さで圧倒した。

 32歳は幾度となく、優勝争いに絡んできたが、いまだその腕に賜杯(しはい)を抱いたことがない。

 終盤に弱い悪癖がある。

 13日目まで単独トップだった春場所では、14日目と千秋楽の本割、決定戦で「3連敗」した。

 「この気持ちを忘れない」。場所後、全取組を映像で見返し、終盤戦になると攻め急ぐ弱点に気づいた。

 稽古熱心な姿勢は誰もが認める。

 所属する田子ノ浦部屋には、自分以外に幕内力士がいない。今場所前も精力的に出稽古し、伊勢ケ浜部屋で横綱照ノ富士に胸を出してもらった。

 この夏には第2子も生まれ、「記念の場所になるようベストを尽くす」とさらなるモチベーションにもなった。

 1差で追う優勝争い。

 過去の教訓を問われると、「落ち着いて相撲をとる。切羽詰まるより、自分のペースで」。

 これまでの悔しさが無駄ではないと証明したい。加藤秀彬