日本人が竹に見てきた聖性とは 竹工芸家が表現する「循環」の思想

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聞き手・西田理人 写真・滝沢美穂子
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 伝統技法で編み上げた巨大な作品は、展示が終わるとその場で解体。素材の竹ひごは再利用され、別の会場でまた新たな作品に生まれ変わります。竹工芸家・四代田辺竹雲斎さん(49)が現代アートで表現するのは、「循環」の思想。100年を超える技術と精神をいかに後代に伝えるか。ユニークな取り組みを語ってもらいました。

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 ――昨年度は芸術選奨新人賞や伝統文化ポーラ賞奨励賞などの受賞が相次ぎ、地元では大阪文化賞にも選ばれました。

 「初代田辺竹雲斎の時代から、代々この大阪・堺を拠点にしてきました。現在は海外で展覧会を開くことも多いですが、やはり地元で評価していただけるのはとてもうれしいことです」

 「初代は1877年生まれで、13歳で大阪市住吉区の竹工芸の工房に弟子入りします。10年ほど修行を積み、1901年の独立時に師匠から与えられたのが竹雲斎という名前でした。彼が堺を拠点にしたのは、文化人や商人らが多く住み、文化的・経済的に栄えていたから。第二次世界大戦の空襲によって、当時の面影はほとんど失われてしまいますが、その後の祖父(二代)や父(三代)もこの街を愛し、ここで活動を続けてきました」

 ――花籃(はなかご)など伝統的な竹工芸作品の制作を続けながら、現代アートの分野でも活動を展開されています。

 「数千本の竹ひごを編み、巨大な構造物をつくるインスタレーションを世界各地で発表しています。現在は、米ハリウッド日本文化の発信拠点である『ジャパン・ハウス』で個展を開催中です。開幕前に弟子たちと現地に約3週間滞在し、うねりつつ空間に広がる有機的な大型作品を制作しました」

 ――竹を編むだけで、あのダイナミックな造形を生み出せるのですか。

 「六角形に編んだいわゆるハニカム構造をつなげていくことで、接着剤や支柱などを使わずに強い構造を作ることができます。竹ひごと竹ひごの間隔を変えれば、強度や柔軟性を自在に調整することもできるんです。竹は筒状のままだと非常に硬いですが、ひごに割って薄く削れば非常に柔らかくなります」

聖域の結界として用いられてきた植物

 ――しなやかでたくましい、そんなイメージ通りの素材なのですね。竹という素材を通じて、どんな意味を伝えられるのでしょうか。

 「昔から日本では、竹は聖なるものが宿る植物として考えられてきました。かぐや姫の物語もその一例でしょう。正月の玄関に飾る門松や、地鎮祭で立てる柱のように、竹は神様を招く結界としても用いられてきました」

 「また竹林に足を踏み入れると、凜(りん)としてまっすぐ伸びる中に、独特の間があり、しなやかに揺れて奥ゆかしさも感じられる。ササがさらさらと音を立てる情景も含めて、竹は日本的な美意識の象徴でもあります。そんな日本の精神文化に深い関わりを持つ素材を作品に用いることで、私たちのアイデンティティーを表現できると考えています」

 ――欧米など世界各地で展示をしていますが、そもそも海外に繰り出すきっかけは何だったのでしょうか。

 「海外で初めて展示をしたの…

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