弁当と見守り続け30年 甲府・食事サービス
【山梨】食事作りが難しい高齢者らに手作りの弁当を届けている甲府市のボランティア団体「甲府・食事サービスをすすめる会」が今年、30周年を迎えた。利用者にとってはコロナ禍で人との接触が少なくなり、弁当だけでなく、配達する人との「会話」も楽しみの一つになっている。
「お元気ですか」。
今月中旬。同市の女性宅(86)にボランティアが夕食の弁当を届けた。
受け取った女性は約4年前、腕の骨折をきっかけに包丁を使うのが難しくなった。「一人暮らしで寂しいので、お弁当が来るのが楽しみ。手作りで安くてね。感謝しています」。
この日のメニューは、ミートローフをメインに、おでん煮、ニンジンサラダなど。4品のおかずとごはんが詰め込まれた。味付けはだしをきかせ、薄味に仕上げている。
弁当は同市宝2丁目の旧穴切小学校敷地内にある調理場で週3回、約100人分が作られる。メニューは、栄養士がメインの肉と魚が交互になるようにし、カロリーなど栄養バランスにも気を配る。19日の敬老の日には「赤飯」を用意するなど季節感も味わってもらっている。
活動は1992年、高齢化に伴って市の配食サービス事業が制度化されるまでの間、試行的に始まった。その後はボランティア団体として継続し、弁当を届けがてら、利用者の顔をみたり、会話をしたりなどの見守り活動も兼ねる。
コロナ禍で変わったこともある。以前は、周囲の目を気にして、勝手口で弁当を受け取っていた人も、テイクアウトが定着し、玄関で堂々と受け取ることができるようになったという。
1食500円で、利用者や会員の会費、寄付などで賄っている。地元の八百屋や肉屋などの協力もあり、差し入れの果物はそのままメニューに載せている。食材価格は高騰しているが、値上げしていない。収支はギリギリだという。
元会長で、配達のボランティアを続ける横山かをるさん(84)は「おいしいと言ってくれる利用者のお顔が見たくてやっている。50代で始めて、80になったら弁当をもらう側にと思ったのですが、まだ、歩いて配っています」と笑う。
利用者は60代から90代。料理を作ったり、配達したりするボランティアも高齢化し、利用者との年齢差があまりなくなった。若いボランティアの確保が課題ではあるが、それでも、続けるやりがいがあるという。
10年前から配達ボランティアを続ける皆川明さん(78)は「皆、顔なじみで楽しみにしている。『助かるわ』『おいしかった』と言われると元気もでる。車の運転が続けられる間は続けたい」と話す。
企画代表の出山治子さん(84)は「30年続けられたのはボランティアのおかげ。私たちも高齢化して心配もあります。一緒に参加してくれる人を募りたい」と呼びかけている。(佐藤靖)
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甲府・食事サービスをすすめる会 調理・配達とコーディネーター役を含めボランティアは約100人。利用者は96世帯115人。
会では、調理と配達を担当するボランティアを募集している。活動は毎週月、水、土。調理は午前10時~午後3時、配達は午後2時半~3時半。運営は利用者の支払う代金や寄付で賄われ、活動をサポートする会員も募る。年会費3千円。問い合わせは055・233・3083(月、水、土曜の午後1時~3時のみ)。
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