「私、殺される」研究室に残した遺言書 ハラスメントと闘った16年

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藤波優
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 「私は、ハラスメントの被害者です。ハラスメントで人生をむちゃくちゃにされました」

 大学のハラスメント講習会で、女性研究者が約150人の教員を前に告白すると、会場は静まりかえった。

 講師が説明する以上に、当事者の心の傷は深いのだと訴えたかった。約10年前のことだ。

 女性はこう続けた。

 「大学の相談窓口に行っても、大学という特殊事情を理解しておらず、企業での対応のような助言しかもらえませんでした。被害者で自助グループを作りたいと思っています」

 ハラスメントとの長い闘いが始まったのは、16年前、女性がいまの大学に赴任した直後だった。

 研究室は、年上の男性研究者と同じ部屋だった。ベニヤ板で各自のスペースは隔てられていたが、入り口は同じ。流しも共用。キーボードの操作音も聞こえるようなつくりだった。

 赴任初日にこう言われたことを覚えている。

 「あんたはここしかもう居場所がない」

 そして「次は早く結婚しないと」「あんたは女らしくない」。そんな言葉があとに続いた。

 女性は困惑した。男性はその後も女性の研究や思想、私生活などあらゆることにケチをつけ、批判してきた。

 特に結婚や出産に関することをかなりしつこく言われた。「生き物として一度は結婚すべきだ」「少子化なのに」。学生やほかの教員がいる前でも平気で言ってきた。

 ある朝のことだった。流しで…

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