安倍元首相の国葬、国論二分し開催 法的根拠あいまい、反対根強い中

国葬

高橋杏璃
【動画】各地で安倍晋三元首相の国葬に反対のデモ=小川智、長島一浩、関田航撮影
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 安倍晋三元首相の国葬が27日、東京都千代田区日本武道館で執り行われた。内閣府によると、海外218の国・地域・国際機関からの要人を含む、国内外から4183人(速報値)が参列した。首相経験者の国葬は1967年の吉田茂氏以来、戦後2例目。開催を巡り国論が二分される中で実施された。

 式典は午後2時から6時過ぎまであった。冒頭、国歌演奏と黙禱(もくとう)に続き、安倍氏の歩みをまとめた約8分間の映像が流れた。弔辞は、葬儀委員長の岸田文雄首相、衆参両院議長、最高裁判所長官の「三権の長」のほか、友人代表として菅義偉前首相が述べた。

 続いて、天皇、皇后両陛下、上皇ご夫妻の使者にあたる侍従4人が拝礼。秋篠宮ご夫妻をはじめとする皇族方7人が供花、拝礼した。その後、国会議員や知事、各界代表者ら参列者が次々と花を捧げた。

 都心は広範囲にわたって警備や交通規制が敷かれた。安倍氏の遺骨を抱えた喪主・昭恵氏を乗せた車両は、東京・富ケ谷の自宅前で自衛隊の儀仗(ぎじょう)隊約20人の敬礼を受け、沿道の人々に見守られる中、武道館に向かった。武道館近くの九段坂公園には一般向けの献花台が設けられ、献花に訪れた人の列ができた。開始予定は午前10時だったが30分早められた。内閣府によると、午後6時までに約2万3千人が訪れたという。

 一方、国会正門前や東京の日比谷公園などでは国葬に反対する集会が開かれた。「弔意の強制になっている」と批判する人らが、「国葬反対」のプラカードを掲げて武道館周辺をデモ行進した。大阪や名古屋などでも集会やデモがあった。

 国葬にあわせ、首相は参列に訪れた海外の首脳級要人らと会談する「弔問外交」に臨んでいる。26日には米国のハリス副大統領ら11の国・国際機関の首脳や代表と個別に会談。27日には豪州のアルバニージー首相やインドのモディ首相と会った。26~28日の計3日間で、約40の国・地域・国際機関の首脳や代表と会談する予定だ。

 岸田首相は、安倍氏が亡くなった6日後の7月14日に、安倍氏の国葬を実施する考えを表明した。憲政史上最長の在任期間や内政・外交での実績などを理由に挙げた。費用として総額16億6千万円の試算も明らかにした。

 だが、法的根拠のあいまいさや費用の不透明さが指摘され、安倍氏と「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の関わりも問題視された。報道各社の世論調査では、反対が賛成を上回った。

 国葬への賛否が分かれる中、政府は官公庁や学校を休みにはせず、イベントの自粛も求めなかった。百貨店などは通常通りに営業した。

 政府は地方自治体や教育委員会に対して、弔意の表明を求めることは見送り、弔旗の掲揚や黙禱をするかどうかはそれぞれの判断に委ねた。省庁に対しては、過去の首相の葬儀にならった内閣の意思決定となる「閣議了解」ではなく、「葬儀委員長決定」の形で要請し、行われた。(高橋杏璃)