直木賞の今村翔吾さん長旅終える ゴールの地は作家デビュー作舞台

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高橋昌宏
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 118泊119日で走破した距離は実に約1万2千キロ。47都道府県の書店など271カ所をめぐった直木賞作家の今村翔吾さん(38)の長旅が9月24日、山形県新庄市でゴールを迎えた。「前人未到」の試みを始めた理由には、作家としての焦りや危機感もあった。

 「118泊の旅が終わりました」

 24日午後2時すぎの新庄市。ゴール会場となった施設に、全国をめぐった車で乗り付け、ゴールテープを切ると、今村さんは出迎えた300人を超える観客らに報告した。

 同市は、今村さんのデビュー作「火喰鳥(ひくいどり) 羽州ぼろ鳶(とび)組」(2017年)の舞台。新庄藩の火消しを題材にした歴史小説で、この作品をきっかけに市民らの「ファン倶楽部」が立ち上がった。今村さんが地元の中高生を対象に文学塾を開くなど交流が続く、思い入れのある場所だ。

 「車で47都道府県を回って、書店を応援したい。書店や学校とか呼んで下さい。ボランティアで行かせてもらいます」

 「塞王(さいおう)の楯(たて)」で直木賞を受賞した今村さんが、記者会見でそう呼びかけたのは今年1月のこと。その約束通り、5月30日、かつて働いていた滋賀県守山市埋蔵文化財センターを出発した。出版不況のなか、書店を盛り上げ、若い世代の読者らに感謝を伝えたいとの思いから「まつり旅」と名付けた。

 各地の書店や学校、図書館などを回り、サイン会や講演を通じて読者らと交流した。

 朝日新聞で8月に始まった連載小説「人よ、花よ、」などの連載を抱えながらの長旅。「作品を生み出しながらやっていきたい」と、走行中も執筆できるように車に机を設置した。運転は事務所スタッフが務めた。

 ゴール後の報告会では旅先での思い出を披露した。岩手県釜石市では、多くの人から声をかけられたという。後に地元の書店がPRしてくれていたことを知った。「書店がポイントになり作家が知られていくことが分かった」

 47都道府県を回りきるまで自宅に帰らないと課したこともあり、体力的、精神的な負担もあった。1日3回の講演などのハードスケジュールをこなし、コンビニで食事を済ますことも。夏の講演では「サウナのような状態」も体験した。「きつい、つらい、暑いと愚痴も言ったが多くの人に支えられた」

 多忙にもかかわらず、なぜ長旅に出たのか。報告会の終盤、迷いつつも個人的な事情を明かした。

 「直木賞の前ぐらいから(以…

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