第5回国葬で失った支持、官邸内からも「失敗」 残された安倍氏の「宿題」

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西村圭史
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国葬の代償(第5回) 誤算

 秋晴れの9月27日午後2時。国内外から参列した4千人以上が、厳かな空気に包まれていた。「故安倍晋三国葬儀」が日本武道館で始まった。首相の岸田文雄は、葬儀委員長を務めた。

 「憲政史上最も長く政権にありましたが、歴史はその長さよりも、達成した事績によってあなたを記憶することでしょう」。生前好んだレジメンタルタイを締め、笑みを浮かべる安倍の遺影。黒の礼服姿の岸田は、遺影を時折見上げ、追悼の辞を読み進めた。外国要人を意識して、外交を中心に安倍の功績を紹介した。そして、こう締めくくった。

 「あなたが敷いた土台の上に、持続的で、すべての人が輝く包摂的な日本を、地域を、世界をつくっていく」

 今後、自らの政権で本格化させようとする、社会保障改革や、賃金格差是正など「新しい資本主義」への決意を込めてみせた。

連載「国葬の代償」(全5回)はこちら

安倍晋三元首相の国葬が執り行われました。しかし、世論の賛否は割れたままで、内閣支持率も急落。岸田文雄首相は代償を払うことになりました。舞台裏で何が起きていたのか。5回にわたってお伝えします。

 会場近くの一般献花台には、朝から数キロにもおよぶ長蛇の列ができた。各地からの献花者は絶えず、約2万6千人にのぼった。首相周辺は喜んだ。「報道は賛否が割れているというけど、『どこが?』って感じだね」

 国葬当日と前後の計3日間、岸田の姿はほとんど、東京都港区迎賓館にあった。

 他国との会談を終えて部屋を出た岸田が別室へ急ぐ。官僚から次の会談国について説明を受けると、すぐさま別の部屋での会談へ。終えると、また別室に戻って説明を受ける。「弔問外交」に岸田はいそしんだ。短時間の会談を繰り返し、会談した国・地域・国際機関の数は約40に上った。

 その「マラソン会談」で岸田は、安倍が提唱して進めた「自由で開かれたインド太平洋」構想について語り、「安倍氏の外交政策や戦略を継承する」と伝えた。首相周辺は「安倍氏が培ってきた外交を岸田カラーに染める。いいスタートになった」と高揚した。

官邸内で漏れるささやき

 しかし、分断された国論は国葬当日、あらわになった。日本武道館や国会の周辺だけでなく、各地で「国葬反対」と書かれたプラカードや横断幕を掲げたデモが行われた。

 ある官邸幹部は胸の内を明か…

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    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2022年9月29日22時49分 投稿
    【視点】

    岸田首相の覇気のなさはテレビの生中継を見ていて私も感じました。相まって深刻なのが国葬問題での変わらぬずれっぷりです。語られた検証の目標は「国民のより幅広い理解を得て国葬を執り行うには」。しかし今回はひとえに、国として特定の人物を弔うという重