漫画家仲間は見た 「ゴルゴ13」さいとう・たかをさんの手のひら

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黒田健朗
【動画】さいとう・たかをさん お別れ会=竹花徹朗撮影

 「たかをちゃん」

 祭壇に飾られた笑顔の遺影に向かって、友人は静かにそう語りかけた。

 29日、東京都千代田区帝国ホテル。「ゴルゴ13」の作者で知られ、昨年9月に死去した漫画家さいとう・たかをさんのお別れ会があり、漫画家仲間で、「あしたのジョー」「のたり松太郎」のちばてつやさんが弔辞を読み上げた。

 さいとうさんとはゴルフ仲間でもあった。

 「たかをちゃんのゴルフの腕は相当なもので、はるか遠くを歩いている前の組に打ち込んで叱られるくらい、ドライバーをよく飛ばしていた。パターを自在に駆使してとんでもなく長いパットをそれこそスナイパーのように冷静に沈めまくっていましたっけ」

 「ゴルゴ13」の主人公で、国籍不明の寡黙な超一流スナイパー、デューク東郷と重ね合わせながら、当時を懐かしんだ。

 さいとうさんは漫画の世界に革新をもたらした。リアルな描写の「劇画」で、それまで子どもが読むものとされていた漫画の読者層を大人にも広げた。構成や脚本、作画……と、漫画の世界に分業制を持ち込み、質の高い作品を安定的に世に送り出した。

 ちばさんは、会場でそんなさいとうさんの先見性をこうたたえた。

 「(分業制は)合理的で進歩的だった。いずれ大人がコミックを楽しむ時代がくることも予見していた。劇画という漫画のいちジャンルを創生し、日本の漫画、劇画文化をここまで大きくしたのはあなたの功績です。あなたを亡くした漫画界の損失は深く重くはかりしれない」

 「今ごろは大の仲良しだった石ノ森章太郎さん、藤子不二雄(A)さん、古谷三敏さんとお酒を酌み交わしていることでしょう。たかをちゃん、わしもまもなくそっちに行くので、待っとってね」

 お別れの会では、「アリエスの乙女たち」「天上の虹」の里中満智子さんや、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(こち亀)の秋本治さんも弔辞を読み上げた。

 里中さんも、弔辞で分業制に触れた。かつてさいとうさんに「自分で隅から隅まで描きたくなることもあるのでは?」と尋ねたら、「それぞれが得意な分野を集めてひとつの作品を作る。自分は、自分より上手な人の才能を生かしたい」と返ってきたエピソードを披露。「自分を抑えてこそ、みんなの力を生かせるという意味だと受け止めた。信念を貫く覚悟があったからこそ、成立したプロダクションシステムであり、さいとう作品なのです。誰もがまねできない」と語った。

作品をほとんど描いていない? 都市伝説打ち消す弔辞

 さいとうさんを巡っては、分業制の印象からか、「自身ではほとんど描いていない」といううわさが都市伝説として広がったが、会場でこれを打ち消すように、こんな話も披露した。

 「先生が80歳近くになった…

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