第3回「町が死んでしまう」 84歳自治会長、12時間フル稼働する理由

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牛尾梓、篠健一郎
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 羽田空港と目と鼻の先にある大田区東糀谷6丁目。「中心部」にあるのは、5~12階建ての都営団地「東糀谷六丁目アパート」全5棟だ。

 20年に実施された国勢調査で、この町の65歳以上の高齢者の割合は64%。東京23区内で最も高齢化が進む「限界集落」だ。

 団地中央にある児童公園に面した自治会集会室を訪ねると、自治会長の今野奏平さん(84)が迎えてくれた。

 今野さんは午前9時から午後9時まで、ほぼ毎日、ここで「スタンバイ」しているのだという。

 「蛍光灯スイッチのひもが切れた」

 「トイレが詰まった」

 「雨どいの水があふれた」

 日に何度も、集会室の電話が鳴る。

 「自治会というより管理人ですね」

 おむつをトイレに流してしまったり、雨どいにスプーンを詰まらせたり。思いも寄らない「事件」が毎日のように起こるという。

コミュニティーが作れると信じた、でも…

 高校卒業後、岩手県遠野市から上京した今野さんは、当時新築だった団地を、子どもたちの「ふるさと」にしたかったという。

 完成当時は、「1部屋3世代で住める」というふれこみだった。

 団地内の公園で夏には盆踊りを、秋には運動会を開いた。集合住宅でも、地域ならではの文化やコミュニティーが作れると信じていた。

 しかし1990年代後半ごろ…

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