参院選に挑んだ「コリア系日本人」 金泰泳さんが探る在日の新しい姿

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聞き手・岡田玄
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 今年7月の参院選に、日本国籍を取得した在日コリアンが立候補した。東洋大学教授の金泰泳(キムテヨン)さん。これまで朝鮮籍、韓国籍、日本籍と変えてきた。「国籍はアイデンティティーの一部だが、着脱可能なもの」と語る金さんが考える、これからの在日の姿とは。

 韓国籍でしたが、2009年に日本国籍を取得しました。「内側」から日本を変えたいとの思いが強くなったためです。落選はしましたが、金泰泳の名前で今年の参院選に立候補しました。

 1963年、愛知県生まれ。専門は社会学。父は在日1世、母は2世。日本名は井沢泰樹。

 生まれた時は朝鮮籍。高校まで通名で生活していました。生まれ育った町には在日が多く住んでいましたが、隠して暮らす人が大半でした。だから、誰が在日なのかわからず、仲間意識もなかった。

 学校で在日への差別発言を聞いたり、同級生の出自が暴かれたりしても、周囲にあわせて笑ったり、逆に黙って知らぬふりをしたりしていました。「いつ自分が標的になるか」と怖かったからです。罪悪感より、自分を守ることが第一でした。被差別部落出身の青年を描いた島崎藤村の「破戒」を読んだ時、自分のことだと思いました。

 転機は進学です。家計が苦しくて、選んだのは、大阪市立大学の夜間部でした。そこで知り合った在日たちは、本名を隠さずに生きていました。それが、まぶしかった。18歳の時、級友の前で「これからは金と呼んでほしい」と、本名を宣言しました。そこから、韓国語も学び始めました。

 よかったことばかりではありません。本名を名乗ったら、アルバイトをクビになったこともありました。

本名で暮らす在日コリアンたちに出会い、民族意識にめざめた金泰泳さんですが、在日の子どもたちへの教育に関わる中で、自分に起きた変化にも疑問の目を向け始めます。また、民族教育の理念が抱える矛盾にも直面します。記事後半で語ります。

 在日の子を対象にした民族学…

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    箱田哲也
    (朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当)
    2022年10月2日16時10分 投稿
    【視点】

     「在日」をめぐる画期的な指摘と言えるだろう。  大阪の下町に生まれ育ち、その後、韓国で語学研修した身としては、金泰泳さんの話す一つひとつに、これまで見た在日の人々の苦悩の情景が浮かぶ。  在日の「あるべき姿」などなく、「内側」から変え

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    末冨芳
    (日本大学文理学部教授)
    2022年10月2日6時59分 投稿
    【視点】

    金泰泳さん、前に勤務していた大学の同僚でした。国籍取得の時にもご連絡頂きました。「思い切った」選択だと感じましたが、金さんの選択の理由がわかりました。 高校まで誰が在日か分からず、在日コリアンが自分のアイデンティティを隠して生きなけれ