第3回「1人になっちゃった」保護した園児の事情 親子守るこども園の奮闘

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中井なつみ
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 「今日、ごはん食べてきた?」

 すこし元気がない表情で登園してきた園児に、保育士がこっそり声を掛けた。

 「ううん」とうつむく園児。「じゃあ、こっちにおいで」

 周囲に悟られないよう、職員室にそっと連れて行き、スティックパンやバナナなどの軽食を渡す。「これ食べて、元気に遊ぼうね」。そう話しかけると、園児は明るくうなずいた。

 神戸市北区の山あいにある、明照認定こども園(定員125人)。0~5歳児の約100人が通う。その中で、家庭での虐待や、園児や家族の障害など、何らかの形で保育園での手厚い支援が必要とされる子どもたちの数は、全体の約3割になる。

 保育園は、働く保護者の子どもを預けるためだけの場所ではない。児童福祉法は次のように定める。「市町村は、保護者の労働又は疾病その他の事由により、児童について保育を必要とする場合、保育所において保育しなければならない」(24条1項) 。育児に不安を抱える保護者の支援をしたり、虐待リスクのある家庭の子どもの見守りをしたり……。地域の中で、子どもたちと保護者を守る「最後のとりで」として奔走する保育施設が神戸市にあると聞き、訪ねた。

 園の周囲は、空き家も目立ち、高齢者が多い過疎化地域だ。少子化の進行に伴って定員に余裕が生まれたことで、それまで優先順位の高かった「保護者の就労」だけではない、さまざまな家庭のニーズに応えられるようになってきた。園はいま、様々な家庭環境にある親子を支える場所にもなっている。

 園長の黒川泰代さんは「職員が手厚くフォローしなくてはいけないケースが、年々増えている。この園が守っているのは、子どもの育ちだけではなく、親子の命でもあるのです」と話す。

寒い時期、薄着で100円玉2枚を握りしめていた園児

 色とりどりの飾り付けや、子どもの絵画が並ぶ、和やかな雰囲気が漂う園内。だが、いつも緊張と隣りあわせだという。

 ある日、こんなことがあった。

 「こども園の名前を言う子ど…

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    座安あきの
    (ジャーナリスト・コンサルタント)
    2022年10月8日12時18分 投稿
    【視点】

    保育の現場を取材すると、教育や福祉に対する国の考え方や姿勢がよく見えます。行財政改革の一環で国の保育制度を大きく変えようという動きが起こった2012年当時、政府が「総合こども園」(のちに撤回)の創設案と合わせて、市町村の保育の実施義務を定め