第6回日本のホワイトカラー、人材投資進まないワケ 社内はパイの奪い合い

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聞き手・橋本拓樹
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 企業や日本経済の成長のカギを握るのが、人材育成です。デジタル分野を始めとした学び直し(リスキリング)の重要性が指摘される一方で、仕事をしながら先輩が若手に技術や知識を教えるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)は減ったと言われます。日本の人材育成の課題について、法政大学キャリアデザイン学部の梅崎修教授に聞きました。

OJT、企業内でパイの奪い合い

 ――OJTは日本企業の強みといわれてきましたが、現状はどうでしょうか。

 「急速に減りました。近年は企業のなかで短期的な業績が重視されるようになり、目標は数値化されています。ただ、OJT(の効果)はそもそも数値化できないし、長期間でないと測れない。本当は効果があってもないと思われてしまい、どうしても減らされやすい傾向にあります」

 「OJTは今でも重要ですが、ただすればいいのではありません。人によって仕事のパターンやベストなキャリア形成は異なり、そのために必要なOJTがあります。かつては企業が従業員それぞれに適したOJTの機会を設けてくれていました。総合商社で将来は事業部長になり得る社員であれば、次はインドに駐在して、その次は新しいビジネスを担当させて、と考えてくれた。そうしたうまく機能するOJTを得られる機会は、今ではとても小さくなっており、社内で非常に限られたパイの奪い合いをしています」

ホワイトカラーに人的投資がされず、賃金も上がらないのは……

 ――旧来の日本企業では、どのようにOJTを活用して人材を育てていたのでしょうか。

 「新商品やイノベーションを生み出すのと同様に、人材育成もどこに投資するのが効率的なのか前もって判断することはできません。とはいえ、やみくもに金を使えばいいわけでもない。かつて製造部門や営業の職場では、こんな人材を育てることが必要ではないか、という価値観が形成できていました。現場が生み出した価値観や人材像を元に社内で議論をし、どんな育成に力を入れていくか優先順位が決められてきた。そうした価値観は次第に、製造業の生産部門でOJTやジョブ・ローテーションによって技能が高まっていくとされた『知的熟練論』や、トヨタ自動車の『カイゼン』などに具体化されていきました」

 「1990年代までは、まず生産システムが変わり、そこでどんな能力・スキルが必要なのかという価値観が現場で共有されて、皆の目標ができた。そこへ経営者が投資をし、賃上げにもつながった。一方で技術が変化し、熟練した技能が新しい技能に取って代わられていくことが労働史・技術史では繰り返されています。残念ながら、近年は産業構造や生産システムが変化しても、こうした職場から湧き上がってくる価値観はバージョンアップしていないように思います。社内でどんな人材が必要なのか議論を尽くして、こんな30~40代になってほしい、という『人材像のキャッチコピー』を創造できていない」

 「産業がサービス化されても、ホワイトカラーでキャッチコピーをつくる旗振り役がいない。だから一部の先端分野で人材を育てたところで、ホワイトカラー全体には必要な人的投資がされず、賃金も上がらない。こうした価値観の共有は、今あらためてすべきことです」

記事の後半では、日本の企業で人材登用が進まない背景や、働き手の間に生まれている教育・訓練の格差、政策に欠けている視点などを聞きます。

■「いい課長さん」が持つ能力…

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