ロシアによる「併合」は違法であり無効 宮内靖彦・国学院大教授

ウクライナ情勢

聞き手・丹内敦子
[PR]

 ロシアのプーチン大統領は9月30日、軍事侵攻で占領したウクライナ東部、南部の支配地を自国に併合すると一方的に宣言しました。この「併合」は国際法の見地から、どうみればいいのでしょうか。ロシアが「併合」を宣言した領土をウクライナが攻撃した場合、どうみなされるのでしょうか。国際法が専門の国学院大学の宮内靖彦教授に聞きました。

 ――プーチン氏がウクライナ東部、南部の4州の併合を宣言しました。これらの併合について、国際法的にはどうみればいいのでしょうか。

 ロシアによるウクライナ4州の併合が合法か否かは、事がロシアの武力行使に端を発しているので、武力行使そのものが合法かどうかにかかっています。

 ロシアによる武力行使は、国連憲章2条4項で定められた武力の行使を禁止する原則に正面から抵触しています。国連総会の「侵略の定義に関する決議」がありますが、そこでは違法な武力行使の結果として併合した場合は、侵略とみなされることが確認されています。

 国際司法裁判所の判決に従っても、武力攻撃と解釈できます。

 そう考えると、ロシアの行動は違法な武力行使であり、その結果の併合も違法です。併合宣言も無効ということになります。ウクライナや国際社会は違法であることを前提に動き、併合を承認しないでしょう。

 国連は総会で併合を承認しないよう求める決議を採択することができます。ただ、国連が動かなくても、武力不行使の原則は、強行規範(国際法において決して犯してはならないルール)なので、どの国も、その違反の結果生じた状態を承認してはならないことが求められています。

 ――併合が宣言された地域をウクライナが攻撃した場合、その行為は合法なのでしょうか? ウクライナに武器を供与して軍事支援する米国などの行為はどうみればいいのでしょうか?

 ウクライナとしては侵略を受け続けているので、自衛権を行使して取り返すということになります。また、ウクライナの反撃行為が自衛権として正当である限り、米国などが武器を供与して支援しても、合法行為への協力ですから、合法だと言えると思います。

 武器の合法性については、国際法の分野としての武力紛争法で規制されています。同法において合法な武器を使い、合法な方法で戦えば、武力紛争法に違反しません。

 ――ロシアの一連の行為による国際社会への影響をどう見ますか?

 ロシアは国連安全保障理事会常任理事国であるにもかかわらず、国連の集団安全保障体制を機能麻痺(まひ)にさせています。拒否権行使という手続き的な問題だけでなく、自国の国益のために国連体制の根幹である武力不行使の原則を自らが否定しています。国際社会が満州事変以後の戦前日本の行為を否認して成立させた、国連体制そのものへの挑戦だと言えます。

 国連が動かないときに、国際社会は武力行使の禁止をどのように守らせるのかが問われています。武力行使をしてはならないというルールを守らせる覚悟を持たなければならないと思います。

 ウクライナの問題に対処するためには、ロシアの武力行使による結果を認めないことを前提に、ウクライナ戦争後、武力行使を禁止するルールを遵守(じゅんしゅ)させるために、国際社会の力をいかに結集するかを考えなければなりません。人類の知恵を結集した工夫が必要になっていると思います。(聞き手・丹内敦子)