家計圧迫する介護の負担 保険料増かサービス見直しか、陥るジレンマ
保険料増か、サービス見直しか――。膨らみ続ける費用を背景に、介護保険制度がジレンマに陥っている。高齢者の生活に大きな影響を及ぼすだけに、打開策を見いだすのは簡単ではない。
京都府在住の造酒(みき)錦代さん(68)は、要介護4で認知症を患う母親(93)を自宅で介護している。
週3回、デイサービスを利用しながら、月々かかる介護の費用は平均3万円弱。母親の国民年金は介護費用や医療費の支払いなどでほとんどなくなってしまう。年々増加する介護保険料と利用者負担の両方が家計に重くのしかかる。「本当にカツカツ。介護保険の負担は生活に直結する」と硬い表情だ。
母親は元々、岡山県に住んでいた。造酒さんは京都から通いながら「遠距離介護」をしていた。だが6年前、母が住んでいた自治体ではヘルパーが不足し、デイサービスにも空きがないなど必要な在宅介護サービスを受けるのが難しくなった。
その頃、誤嚥(ごえん)性肺炎で入院したこともきっかけとなり、京都の自宅で直接介護することになった。介護事業者の運営の厳しさを聞くこともあり、「在宅介護サービスが受けられない地域がほかにも出てくるのでは」と話す。
介護保険の財政状況が逼迫(ひっぱく)しつつあることから、国はサービスの見直しの検討を余儀なくされている。検討項目の一つにあがるのが、比較的軽度の要介護1、2の人が利用する訪問介護やデイサービスについて、市町村が実施する地域支援事業に移す案だ。
保険料の基準「所得状況などを細かく見て」
だが市町村に移すと、自治体…

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