「何だおまえ、どこ行っちゃったんだ」 藤子不二雄Aさんお別れの会
4月に88歳で亡くなった漫画家の藤子不二雄(A)(本名安孫子素雄〈あびこ・もとお〉)さんのお別れの会が31日、東京都内で開かれた。漫画家仲間や、若かりし日々をともに過ごした「トキワ荘」時代の盟友らが、故人との思い出や作品について振り返った。
「シルバークロスという作品があるんですが……」。会に先立って行われた取材会で、藤子(A)さんから受けた影響を問われた後輩漫画家の永井豪さん(77)は、この作品をあげた。1960年代に少年誌で連載されたヒーローもの。敵は仮面の怪人だ。
「子ども心に本当の顔ってなんだろうと思い、もしかしたら表面的な顔よりも心の顔のようなものをそれぞれ持っていて、それが人の真実を語れるんじゃないかと。そういう思いが、(自身の代表作)『デビルマン』などにもつながっていったと思います」
「忍者ハットリくん」「怪物くん」のような明るい少年漫画から、「笑ゥせぇるすまん」のような人間の心の闇を描く大人向けの漫画まで。そんな、幅広い作品を世に送り出してきた藤子(A)さんを語るうえで欠かせないのが、20代の大半を過ごした東京・椎名町(当時)のアパート「トキワ荘」だ。
2人で1人の漫画家「藤子不二雄」として活動した相棒の藤子・F・不二雄さんのほか、寺田ヒロオさん、石ノ森章太郎さん、赤塚不二夫さんら若手漫画家とともに暮らし、切磋琢磨(せっさたくま)した。その青春時代は自伝的作品「まんが道」で詳細に描かれた。
トキワ荘の仲間の人気者だった
お別れの会には、そのトキワ荘時代の仲間たちも姿を見せ、会の終了後に取材に応じた。
トキワ荘の住人だったアニメーション作家の鈴木伸一さん(88)は、藤子作品でおなじみの「ラーメン大好き小池さん」のモデルとして知られる。
トキワ荘に仲間たちが集まると、見た映画や読んだ本の話などでよく盛り上がった。おなかがすくと、近所の中華料理店「松葉」にラーメンの出前を頼んだ。注文を店に伝えるのは、藤子(A)さんの役目だったという。「世話好きで、仲間うちから人気がありました」
お別れの会の会場には、トキ…