10月のお菓子の銘は「山づと」です。山苞(やまづと)の「苞(つと)」はわら包み、みやげを意味する言葉で、実った栗が秋の山からのおみやげというわけです。

 このごろは四季のテンポが今までとは違い、台風は容赦なく熟してきた実を傷つけ、過ぎていきます。産地の人も菓子屋さんも、気をもんで迎えた収穫でした。つやつやの蜜煮となったひと粒を、やわらかなきんとんと一緒に口に運べば、ほっと、笑顔にならずにはいられません。

 栗は縄文期には暮らしのそばにありました。「現代まで木材として食料として利用している。日本人にとって、大切な木です」と、京都大学生存圏研究所講師の田鶴寿弥子さん。田鶴さんは、仏像や建築など文化財の樹種を調査し、そこから木と人との関係を研究しています。近著に「ひとかけらの木片が教えてくれること 木片×科学×歴史」(淡交社)があります。

 「樹種を調べると適所適材の『用材認識』が見えてきます。樹種が選ばれる背景には物性だけでなく木への信仰もありそうです」。栗は大きく育ち、材質は硬く、タンニンが多いので水や虫に強い。鉄道の枕木や住宅の土台に使われた理由です。

 目に触れる用途では、素朴さや森の自然の象徴です。田鶴さんは、さまざまな樹種を組み合わせる茶室を例に教えてくれました。「茶室の柱には、樹皮付きの赤松のほか、『なぐり』と呼ぶ表面に模様をつけた栗が使われることもあります。静かに里山の様子を表現しているのでしょう」

 木を素材にした芸術品を、私たちの国の宝というなら、そこに使う木も丸ごと宝ものです。(編集委員・長沢美津子

10月のおかし

銘 山づと 丹波産の栗の蜜煮と小豆の粒あんを、淡い緑に染めてそぼろ状にした白あんで包んできんとんに。栗のいがを表す。

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協力:今西善也 京都祇園町「鍵善良房」15代主人。