「南三陸311メモリアル」開館 隈研吾さん「新たな船出感じて」
宮城県南三陸町の震災伝承施設「南三陸311メモリアル」が1日、オープンした。被災した町民の証言を基にした学習プログラムが目玉で、町は「復興の集大成」と位置づける。震災から11年半を経て、町が進めてきたハード整備は事実上、終わった。
この日開かれた式典で、設計者の建築家、隈研吾さんは「2階から海を見ながら、町の新たな船出を感じてほしい」、佐藤仁町長は「命をどうしたら守れるか訴え続けたいという町民の思いが形になった」とあいさつ。テープカットし、くす玉を割って祝った。
町民代表として「感謝のことば」を述べた建設機械販売会社員、西城皇祐(こうすけ)さん(24)は3・11当時、中学1年生で、自宅が津波で流失した。館内を見た後、「記憶の風化はやむを得ないが、少しでも食い止めるための施設になってほしい」と語った。一般公開が始まると、待ちかねた町民らが続々と入館した。
メモリアルは道の駅の一角にあり、鉄骨造り一部2階建て。地元産の杉がふんだんに使われ、延べ床面積約600平方メートル。有料・無料のエリアに分かれており、町が受けた被害の解説のほか、仏の現代美術家、クリスチャン・ボルタンスキー氏(故人)の作品が展示されている。
併設のJR気仙沼線BRT(バス高速輸送システム)の志津川駅や、高速バスのターミナルも運用が始まった。事業費は約14億円。隣接する南三陸さんさん商店街、川を挟んだ震災復興祈念公園と併せ、町最大の観光・交流拠点となる。
公園内の防災対策庁舎は津波で全壊し、町職員ら43人が犠牲になった。震災遺構として保存か解体か、町内では意見が割れていたが、県が2015年、震災から20年後の31年まで維持管理する「県有化」を決め、議論の期間を設けた。現在、町内で有志が話し合いを続けている。(星乃勇介)
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