東北の自治体「公営塾」相次ぎ開設 高校ない町、駅前ビルに100人

高橋昌宏
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 「公営塾」を開設する自治体が相次いでいる。地域の児童・生徒の学習サポートを目的に、市町村が放課後などに運営する塾のことだ。対象は小中学生に加え、近年は高校生にまで広がっているという。なぜ、公費を投じてまで塾を運営するのか。東北での取り組みを追った。

 福島県国見町のJR藤田駅前にあるビル。この一角で昨年6月、町が運営する「放課後塾ハル」がスタートした。現在、小学5年から中学3年までの約100人が週1回(中3は夏から週2)通う。中学部は英語と数学を中心に集団授業と個別学習を組み合わせ、中3には受験対策も行う。

 町教育委員会生涯学習課の鴫原貴史係長は「教育を巡る地域格差をなくしたいというのがきっかけ」と説明する。町内に大規模な塾はなく、約16キロ離れた福島市まで通うには費用や時間、送迎の負担がかかる。「地理的、経済的な事情で塾に通えないことで、学力の差が生まれないようにしたかった」

 月謝は小学生が無料、中学生が週1回で1500円、週2回で3千円だ。

 指導に当たるのは地域おこし協力隊の4人。学習支援にとどまらず、地域の人々と一緒に学ぶイベントも企画した。町内には高校がなく、高校進学を機に町と関わりが薄くなる子どもたちも多い。「町への愛着や関心を持ってもらう」ことも狙う。

 塾長を務める三好菜月さんは「子どもたちの目標を引き出し、その実現に向け、伴走していくという意識を大切にしている」と話す。

 講師の派遣を含む塾の運営業務について、教育サービス会社の支援に頼る自治体も少なくない。

 「プランニングドアーズ」(仙台市)は2011年、秋田県小坂町から業務委託を受けたのを機に公営塾のサポート事業に参入。現在、東北6県の20市町村と契約を結び、協力関係にある学習塾から講師を派遣する。

「公営塾ブーム」で問い合わせ増

 石川忠春社長は「山形県最上地方の自治体からの委託が多かったが、ここ2、3年の『公営塾ブーム』で一気に6県からの問い合わせが増えた」と話す。

 最近の動きとして「自治体が地元の公立高内に公営塾を置く動きが目立つ」と指摘する。少子化を背景に、東北でも公立高の閉校や統合が進む。地元から高校が消えるのを避けるため、大学進学などを支援する公営塾の開設で差別化を図るという側面もある。

 「唯一の高校が消え、一気に地域から若い層がいなくなることへの危機感は強く、何とか食い止めたいという熱量は強い」と石川社長。将来、地元に戻り、地域を担ってくれる人材を育てたいという思いは国見町と共通する。

 岩手県岩手町は今年5月、「ゆはず未来塾」を県立沼宮内高内で始めた。同校からの要望で設置を決めたという。大学進学を志望する2年生が英語、数学、国語を無料で学ぶ。

 同校は今春の入試で、推薦合格を除く実質定員79人に対し、志願者は24人。志願倍率は約0・30倍と定員を大きく割った。町の担当者は「進学実績を重ねることでそれが魅力となり、志願者が増えれば」と願う。

 町は3月、同校と人材育成の連携協定を結んでいて、塾の開設もその一環だ。「県立高に町が塾を開設する意味は、町の未来を担う人材の育成にある」(高橋昌宏)

東北での公営塾の取り組み事例

    自治体  対象

青森県 七戸町  七戸高生

岩手県 葛巻町  葛巻高生

宮城県 大衡村  小5~中3

秋田県 東成瀬村 中学生

山形県 大蔵村  小5~中3

福島県 只見町  只見高生