悩む甲斐に届いたメール ソフトバンク復活の裏に王会長の「献身」
プロ野球ソフトバンクが運命の今季最終戦を迎える。2日の敵地ロッテ戦で勝つか引き分けると、自力での優勝が決まる。
昨季はリーグ4位で、8年ぶりのBクラス(4位以下)に沈んだ。今季の巻き返しの裏には、昨秋に特別チームアドバイザーに就任した王貞治会長(82)の「献身」があった。
9月25日の本拠ロッテ戦。四回に甲斐拓也(29)が左翼テラス席に1号3ランを放った。昨季は12本塁打を放ったが、今季は極度の打撃不振にあえぎ、実に384打席目での初アーチだった。
試合後に甲斐はホッとした表情で切り出した。
「今年は足を引っ張って、自分のなかで悔しさやもどかしさがあった」
苦しい日々。早出特打ちを繰り返しても結果が出ない。そんなプロ12年目を支えたのが王会長だった。
打撃練習に付き合い、アドバイスを送ったほか、試合後に気づいた点などをメールで送った。
甲斐は「他の選手の打撃の写真を見せていただいたこともあった。一つずつメールで丁寧に教えて頂いた」と明かす。
メンタル面でも支えになったという。
6月にはマンツーマン指導後に「お前はもっとやれるんだから」と励まされた。甲斐は「こんなにうれしいことはない。一人の野球選手として幸せだなと思ってやってます」と話す。
今季から指揮を執る藤本博史監督(58)は、1軍打撃コーチや2軍、3軍監督などを経験し、指導歴は申し分ない。とはいえ、選手としては華々しい成績を残したわけではない。
海千山千の選手たちを引っ張っていけるのか。昨オフの監督就任にあたって、球団内の一部には不安視する声もあったという。
球団関係者は「王会長は『俺が支えないと』と思われたんじゃないか」と話す。特別チームアドバイザーに就くとともに、今季は現場で指導する姿が増えた。
藤本監督もありがたみを感じている。
「王会長から助言をもらったら、素直に耳に入ってくるんじゃないか」。一方で、「今の選手は普通に話が出来るみたい。僕の選手時代は雲の上の存在で、『はい』『いいえ』しか言えなかった」と笑う。
柳田悠岐(33)が打撃不振に陥ったときは、王会長から藤本監督に「もう少し引きつけて打った方がいい」との助言メールが届いたという。
藤本監督は言う。
「1軍打撃コーチをした経験から言えば、(1軍は)技術を教えるよりも(調子の)良し悪しを探すのが大事。そこで王会長の(技術的な)助言があることで、選手の引き出しが増え、いい方向に向かうと思う」(鷹見正之)
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