昨年とはガラリと変わった「方程式」 オリ逆転連覇、中継ぎ力の勝利
(プロ野球 10月2日、オリックス5―2楽天)
優勝に近づく最後のマウンドに上がったのは、2年目の阿部翔太だった。
「『行く』と言われたときは、心臓が飛び出るかと思った」
本来は抑えの平野佳寿の持ち場だが、これが中嶋聡監督の投手起用だ。選手の実績よりも、状態を優先する。ここまで阿部は防御率0・63。三者凡退で試合を締め、ソフトバンクの結果を待った。直後に、歓喜の輪が広がった。
中嶋監督は「安心して見られました」。さらりと言った。
オリックスはエース山本由伸ら先発陣が目立つが、監督は中継ぎを労うことが多い。
この日、今季の楽天戦で5勝0敗の田嶋大樹が先発したが、四回無死満塁で降板。2番手の比嘉幹貴が2点適時打を浴び、なお無死一、二塁で登板したのが宇田川優希だった。育成選手出身で、7月に支配下登録されたばかりの23歳だ。
「先発がいつも試合をつくってくれる分、中継ぎが試合を壊すわけにはいかない」。右腕は150キロ台の直球で押した。
1死満塁とし、小深田を155キロで遊飛。渡辺佳は143キロのフォークで投ゴロに退け、ここで流れを食い止めた。
8月に1軍デビューした宇田川だが、もう19試合目の登板だった。ここまでの経験が大一番で生きた。
宇田川が2回無失点でつなぎ、山崎颯一郎、ワゲスパックとバトンを渡した。最後は阿部。いずれも、優勝した昨年は勝ちパターンにはいなかった顔ぶれだ。長いシーズンの中で、やや厳しめの場面でも大胆に使ってきた。失敗しても、中嶋監督は「次、やりかえしてほしい」。そうして、使える投手を見極めてきた。
土壇場の大逆転。2年連続で勝利と育成を両立させた。「選手を誇りに思う」。大粒の涙を流し、5度、宙を舞った。(室田賢)