世界、そして日本が食料の不足や高騰におののいている。国連食糧農業機関(FAO)や世界食糧計画(WFP)などが7月に発表した報告書によれば、世界の飢餓人口は約8億人。世界人口の1割に上る。新型コロナの流行とウクライナ戦争以降、急増している。以前から減少傾向にあった飢餓人口は下げ止まり状態が続いていた。その大きな要因は、気候変動の影響とみられる自然災害などによる農業や食料システムへの打撃だった。
地球温暖化の科学をつかさどる「国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が2月に発表した第2作業部会第6次報告書で、第5章「食料、繊維、及びその他の生態系産物」の統括執筆責任者を務めた農研機構気候変動適応策研究領域長の長谷川利拡さんに、温暖化と食料問題について聞いた。
――IPCCの最新報告書の主要なメッセージは何ですか。
温暖化の影響がすでに観察されているということです。最近は、イベントアトリビューションという科学的な手法で、猛暑や豪雨、干ばつなどの極端現象のうち、どのくらいが人間活動による影響かを測れるようになってきました。食料や水、健康に対する影響についても観測される事実が多くなっています。
気候変動がブレーキに…増える「食料ショック」
――食料関係ではいかがでしょうか。
世界の慢性的な飢餓人口は減…