入社半年、あの米企業での研修が縁 フォントの「モリサワ」の転換点

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聞き手・栗林史子 写真・小川智
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 コロナ禍では、文字でのコミュニケーションが増えました。文字があるところには字体のデザインである「フォント」があります。フォントで伝えたいことを強調したり、人柄をにじませたり。今求められている字体はどんなものなのか、フォントをつくっている「モリサワ」(大阪市)の森澤彰彦社長(58)に聞きました。

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 ――フォントはそもそもどのように開発しているのでしょう。

 「まず『どういうフォントが求められているのか』を考えて、デザイナーが最初に500文字ぐらいのラフを作ります。そこからコンピューター上で、漢字の場合は部首ごとに分けて文字を作っていきます。約2万3千字が必要で、通常で2~3年、長くなると5~8年かかります」

 「作成に長期間かかるので、完成した時代を見すえて、どんな文字が求められているのか判断しないといけないという難しさがあります。景気が良いとやわらかい字体が好まれるとか、多少は社会との連動もありますね」

コロナ禍でフォントの役割より重要に

 ――コロナ禍では文字でのコミュニケーションも増えました。どのようなフォントが求められていると感じますか。

 「学校も職場もそうですが、オンラインでの画面上で資料を見せることが増えたため、ユニバーサルデザイン(UD)書体が非常によく使われています」

 「UD書体はもともと、2000年ごろに、高齢化社会に向けて『お年寄りでも読みやすい字を』と開発していたものです。ちょうどその頃、買収した会社が、弱視の子どもたちのための拡大教科書の支援をしていたんです。そこから、視覚障害や、読み書きに困難を持つ学習障害のある子どものための書体など、さまざまな特徴のUD書体の開発を進めました」

 ――どんな書体なのでしょう。

 「たとえば、『ポ』と『ボ』はわかりにくい時がありますよね。『S』と『3』と『8』も、僕のように老眼が入ってくるとみんな『8』に見えてしまいます。そこで、『3』なら左側の空間を広げるなど、文字の中の空間を広く空けて読みやすくする工夫をしています」

 「UD書体は複数ありますが、『UDデジタル教科書体』は、視認性や可読性を上げた上で、子どもたちが正しい部首の形などを学べるようにしたものです。太さが一定に見えるゴシック体は読みやすい一方、書き方を学ぶ上では難しさがあります。たとえば『山』は本来3画ですが、ゴシック体だと端の縦棒が突き抜けているので、4画のように見えてしまう。その点、UDデジタル教科書体は読みやすさと、文字の形の正確さを両立しているんです」

 ――UDフォントはどこで使われているのですか。

 「絶対に読み違えてはいけない医療機器や、上場企業が株主に向けた資料、最近ではデジタル化が進んでいる車の計測器表示など、様々な場面で使われています。(そばのペットボトルを見て)この裏面の表示もそうですね」

もともとは印刷用機械メーカーだった

 ――もともとは、写真の原理を活用して、フィルムから文字を焼きつける「写真植字機(写植機)」という印刷用機械のメーカーですね。どのようにフォントを作る企業になったのでしょう。

 「創業者の森澤信夫が1924年に写植機を開発しました。『(活版印刷を発明した)グーテンベルク以来の大発明』とも言われる大きな変化でした。それまでの組版の主流は、棚から一つずつ活字を拾う「活版印刷」で、手間も時間も膨大にかかっていました。活版は必要な大きさごとに活字を用意しておかなければいけませんが、写植は写真の技術を使うので、文字の拡大縮小が自由にできます。そこでフォントを作ったのが始まりです。とはいえ、モリサワは長らく、その写植機を作る製造業でした。大阪市の本社も、もともとは工場だったんです」

 ――転換点は。

 「私は1986年に入社した…

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