• アピタル

たとえ全盲になっても 自分にしか見えない日常を撮り続ける写真家

藤原伸雄
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 失明の危機と向き合いながら撮影を続ける写真家の戸澤裕司さん(57)の作品40点を展示する「DESTINY」が6~12日、東京都新宿区のアイデムフォトギャラリー「シリウス」で開かれる。入場無料。

 テーマは、コロナ禍の東京。「たとえ全盲になっても撮らなきゃいけない」と、公園で遊ぶマスク姿の少年たちや街を走るウーバーイーツの配達員など、新型コロナの影響で変わりゆく東京の日常を記録した。

 2011年、東日本大震災の取材の際、戸澤さんは「当たり前の日常」を写真として残すことの大切さに気づいたという。訪れた避難所の体育館で、家族の写真やアルバムを探す被災者の姿を見て、「成人式七五三など、出来事や日常を写真として残すことの大事さを感じた」。

 そんな矢先、同年に緑内障と網膜ジストロフィーを発症。次第に視力が低下し、20年11月、左目を失明した。右目は中心部分が欠けたようにドーナツ状にしか見えない。視力は今も低下し続け、完治することはないという。

 発症から10年経った21年、新型コロナの感染拡大により、緊急事態宣言が出され、街から人が消えていた。変わっていく街の日常と失明の危機を感じながら生きる自分の日常が重なった。落ち込むこともあったが、新しい生活様式やたくましく生きる人々の姿に勇気づけられた。気づいたのは「見えていても、見えなかった世界と、見えなくなって見える世界」。

 震災、コロナ、戦争――。自身と同じように「光を失いつつある世界」を前に、「運命は自分で切り開いていくしかない」。

 戸澤さんは、自分にしか見えない日常にレンズを向け続ける。藤原伸雄