「もったいない」 若手芸術家の作品を商品化 岐阜大生の夏目さん

松永佳伸
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 岐阜大学公認の学生団体「起業部」に所属する学生が9月、若手芸術家を支援する会社を設立した。眠っている絵画を活用してグッズを制作販売したり、個展を開くための支援者を募ったりする事業に取り組む。「アートを楽しむ文化をつくりたい」という学生起業家の思いが詰まっている。

 名古屋市に株式会社「artkake(アトカケ)」を設立したのは、岐阜大学地域科学部4年の夏目一輝さん(21)。社名には「アートにきっかけを」という意味を込めた。

 愛知県豊橋市出身。起業を志すきっかけは約1年半前、姉が通っていた愛知県立芸術大学(同県長久手市)の卒業制作展を訪れた時だ。

 同世代の表現力に感動するとともにショックを受けた。長い時間と費用をかけて制作した作品のほとんどは展示が終わると、処分されたり、押し入れに眠ったままになったりしている現実を知ったからだ。

 「もったいない。何とかして生かす方法はないのか」。芸術にあまり関心がなかった夏目さんの気持ちに火がついた。

 名城大農学部から岐阜大へ3年次に編入。起業部に籍を置きながら、名古屋市中村区スタートアップ支援拠点「PRE―STATION Ai」でも活動し、同世代の仲間と切磋琢磨(せっさたくま)してきた。

 夏目さんは、若手アーティストが制作した絵画やデザイン画などを画像データにし、名刺入れやスマートフォンケース、トートバッグなどをつくって販売することにした。「アートを持ち歩くことができ、まちおこしに生かすことができるのでは」と考えたからだ。

 こうしたプランが今年6月、東海地区の大学生が起業に向けてアイデアを競う「Tongaliビジネスプランコンテスト」で最優秀賞を受賞。「商品が売れればアーティストの支援にもつながる。まずは資金面から応援する仕組みをつくりたかった」と夏目さん。

 この受賞をきっかけに、JR東海が運営するECサイト「JR東海マーケット」への出店が決まった。温めてきた事業が形になったことから、9月8日に会社を立ち上げた。起業部で株式会社を設立したのは夏目さんが2人目だ。

 現在、事業化をめざしているのが若手アーティストを発掘し、育てる仕組みづくりだ。アーティストは、自分の作品を気に入ってくれた支援者から資金援助を受け、代わりに作品の所有権の一部を提供する。一定の支援者が集まった段階で個展を開き、アーティストの活動を後押しするという。アトカケがアーティストと支援者、画廊などをつなぐ役割を果たす。

 社員は夏目さん1人。岐阜大起業部のメンバーら3人がボランティアとして会社を支える。東京や名古屋、京都などの画廊、美術館などを訪ね、美術業界の情報収集に力を入れている。

 夏目さんは「まずアートを楽しむ文化を根付かせたい。若いアーティストが活躍できる機会を増やすお手伝いがしたい。現場目線を大切にして事業を進めていきたい」と意気込む。(松永佳伸)

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