愛知県の地方銀行同士で戦後初となる再編が起きた。愛知銀行と中京銀行が3日、持ち株会社をつくって経営統合した。背景にあった、この地特有の事情とは。
持ち株会社は、あいちフィナンシャルグループ(FG)。社長には愛知銀頭取との兼務で伊藤行記氏が就いた。
「ゴールではなく、これからスタート」。3日の式典で伊藤社長は強調した。
〈あいちFG〉 傘下に愛知県の地方銀行で2番手の愛知銀行(3月末の貸出金残高は約2・8兆円)と3番手の中京銀行(同1・5兆円)を抱える持ち株会社。3日の設立直後の株式時価総額は800億円超で、東証プライム上場の銀行グループ67社では中位。
両行はともにFGの完全子会社として傘下に入った。2年後をめどに合併する計画だが、そのために乗りこえないといけない課題がある。
システムの一本化や、統廃合する店舗や部署の選定だ。とくに後者は難題とされる。
高まらなかった切迫感
複数の関係者によると、愛知県では10年ほど前から水面下で地銀再編の機運が高まっていた。人口減と超低金利で全国の地銀の経営環境が厳しくなるなか、金融庁が生き残り策の一つとして再編を促したことが影響したという。
当時は両行だけではなく、名古屋銀行や隣県の地銀も再編の対象として取りざたされた。
しかし、いずれも実現しなかった。関係者の一人は「再編の先にリストラがあると警戒された」と明かす。
合併の大きなメリットは、リストラの効果だ。システムの統合に加えて、地盤や役割の重なりあう店舗などを統廃合できて、要員も減らせる。
こうして固定費が下がれば、経営は改善する。
だが、地方都市で地銀は安定した働き口として知られるだけに、人員削減への抵抗感も強い。これが壁になり、再編に向けた交渉が進まなかったというわけだ。
となりの三重県では、2018年に県内の地銀2行が経営統合し、昨年5月に合併して三十三銀行になった。
だが愛知県は、トヨタ自動車をはじめ有力なメーカーが集まり、金融機関にとって優良な貸出先の多い「肥沃(ひよく)な地域」(地銀幹部)。再編への切迫感は高まらなかった。
「人余り」の懸念やわらぐ
それが今になって愛知銀と中京銀の統合が実現したのは、なぜなのか。
一つは、中京銀が先にリスト…