国産コメをプラスチック原料に こだわる理由は脱炭素だけじゃない
コメは食べるもの。そんな考えを覆す新たな活用法が注目されている。植物由来のバイオマスプラスチックの原料にしようというのだ。石油系原料から置き換えれば脱炭素に貢献でき、原料米の栽培で遊休農地の利用促進にもつながる。原発事故後の営農再開を進める相双地区で、そんな取り組みが始まっている。(荒海謙一)
取り組みの中心は、昨年7月に相馬ガスホールディングス(南相馬市)などが設立したバイオマスプラスチック製造会社、バイオマスレジン福島(同市)だ。
通常のプラスチック原料になる樹脂にコメを練り混ぜて加工すると、粒状のペレットが出来上がる。
同社はこれを「ライスレジン」として商品化し、成形加工メーカーがスプーンやストロー、玩具、ごみ袋などの製品に仕上げる。ライスレジンはバイオマスプラスチックの一種で、石油系原料にコメを最大で7割も混ぜることができる。
同社は浪江町の北産業団地で、11月30日の完成を目指してライスレジンの生産工場を建設している。グループ会社はすでに新潟、熊本両県に工場を持つが、新しくできる工場は年間生産能力3千トンとグループ内で最大規模。フル稼働には1500~2千トンものコメが必要になる。スタート時は確保量に合わせ、能力の半分程度で操業するという。
コメは、同社の関連会社スマートアグリ・リレーションズ(浪江町)が調達する。昨年は、営農を再開した地元の生産組合から約15トンを買い取り、自らもコメをつくり約21トンを調達。今年は作付面積も増え、50トン程度が見込まれている。
しかし、新工場の能力を生かすにはまだコメが足りない。不足分をグループ内で補う一方、今年は飯舘村でも作付けし、栽培面積の拡大を目指している。
実は、バイオマスプラスチックはトウモロコシなどでもつくれるが、バイオマスレジン福島の今津健充社長(40)はコメにこだわる。「植物は生育過程で二酸化炭素を吸収する。輸入すれば、その分を国内に持ち込むことになり、輸送時の二酸化炭素排出もある。だから国産原料が大事で、コメは国内で安定的につくられている」と説明する。
そのコメは地元から調達した…