アントニオ猪木は日本3大偉人の一人である 夢枕獏さん追悼寄稿

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 「燃える闘魂」アントニオ猪木さんが逝った。猪木の闘いを終始見続けてきた、文壇きってのプロレス・格闘技通の作家、夢枕獏さんが鎮魂の念をつづった。

     ◇

 アントニオ猪木が好きだった。

 テレビで放映された試合は全て見ている。

 ぼくの書く物語の多くは、たとえば格闘小説であっても、ややファンタジーに寄っている。世界で一番強い男は誰かと問うことも、エヴェレストの南西壁を冬期に無酸素で登頂することも、白鯨を追うエイハブ船長のピークオッド号に、もし日本人ジョン万次郎が乗っていたらと考えることも、いずれも色の濃さこそ違え、ファンタジーであることに違いはない。何をテーマに書くにしろ、小説、物語を紡ぐというのは、結局のところ、このファンタジーに奉仕する行為であると、今はわかっている。このことについては、物語作家としてすでに肚(はら)をくくっているのである。

 昭和五〇年十二月十一日、蔵前国技館で猪木とビル・ロビンソンが試合をした。六〇分フルタイムを闘って一対一の引き分け。凄(すご)い試合だった。この試合を観(み)た鉄人ルー・テーズは次のように言った。

「なんとファンタスティックな試合だろう」

 プロレスというファンタジー…

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