ニュース信頼性判断にAIが一役 フェイクニュースに揺らぐアメリカ
メディア私評 米在住ジャーナリスト 津山恵子さん
米ヤフーは今年9月6日、人工知能(AI)を使って、ニュース記事の信頼性をランク付けするウェブサイト「ザ・ファクチュアル(The Factual)」を買収したと発表した。米国では、フェイクニュースや陰謀論の蔓延(まんえん)に加え、主要メディアに対する米市民の信頼が過去最低となるなど、流通する情報が信じられていない。米ヤフーは、「ヤフーニュース」に掲載する記事に、ファクチュアルを使ったランク付けを加え、記事の信頼性を判断するのを助ける狙いだ。
ファクチュアルは、2019年に始まり、1日に1万本以上の記事をランク付けしてきた。AIにより、①ニュースの発信源に政治的バイアスがなく、品質が保たれているか②筆者がきちんとリサーチし、専門知識があるか③直接取材の程度を解析。記事の信頼性・信憑(しんぴょう)性を1~100%の数値でランク付けする。75%以上は「極めて参考になる」記事であり、50%以下は「参考にならない」とみなされる。
米ヤフーのホーム・エコシステム担当のマット・サンチェス氏は、買収に際し、こうコメントした。「信頼される情報へのアクセスが、かつてないほど重要である現代において、ファクチュアルが加わるのは喜ばしい」
つやま けいこ
1964年生まれ。米NY在住ジャーナリスト。共編著に「現代アメリカ政治とメディア」など。元共同通信記者。
ヤフーニュースは、月間約2億人のビジターにオリジナル記事や報道機関から集めた記事を提供する。ニュースだけでなく、金融情報、ショッピング、ゲームなどのサービスが世界9億人に届く巨大なプラットフォームだ。
今回の買収の背景には、米市民の「ニュース離れ」という深刻な状況がある。米世論調査機関ギャラップによると、米国人が主要メディアに抱く信頼は今年、同社が調査を始めてから過去最低の水準に落ち込んだ。
新聞への信頼性は成人全体の16%、テレビニュースは11%と、前年比でそれぞれ5ポイント減少した。新聞の発行部数がピークで、CNNなどケーブルニュース局の成長期に当たる1993年には、新聞31%、テレビは46%だった。
なぜ、ここまで落ち込んだの…