岐阜大と名大所蔵の学術資料、一堂に 名古屋大学博物館でコラボ展
【愛知】植物学、動物学から医学教育、歴史・考古学まで、名古屋大学と岐阜大学が所蔵する学術標本のコレクションを展示する「博物館コラボ展」が名古屋大学博物館(名古屋市千種区)で開かれている。
2020年に東海国立大学機構になった両大による初の連携企画展。両大が取り組んできた研究で、関連コレクションに焦点を当てた。最新の研究動向も分かるよう工夫がされている。
動物学は、鳥と卵のコレクションでコラボした。名大は、「家鶏・野鶏解剖学図説」の大著がある保田幹男名誉教授が研究で使ったニワトリや野鳥の剝製(はくせい)や骨格標本。岐阜大は民間企業から寄贈を受けた鳥の卵殻のコレクション208種1440個の一部が並ぶ。
名大が所蔵する木曽馬「第三春山号」の骨格標本は、体格を比較するため岐阜大が所蔵するサラブレッドの脚の骨格標本が添えられている。岐阜大で進む木曽馬のゲノム研究の紹介もある。
医学教育では、岐阜大の技官だった画家丹下年男氏が解剖学の教授の依頼で美濃和紙に水彩で描いた肝臓や大動脈などの「人体解剖掛図」が展示されている。皮膚病や天然痘の症状を人体から型を取って再現した名大のムラージュ(ろう模型)や、名大の技官だった画家木戸史郎氏が顕微鏡で脳や小腸などの切片をのぞきながら描いた「人体組織図」もある。
いずれもカラー写真が普及していなかった当時に、医学教育に使われた精密な図や模型だ。
また、歴史・考古学では、岐阜大が所蔵する奈良時代の「百万塔」と陀羅尼経(だらにきょう)は、紙や印刷の制作技術を知る貴重な資料だ。今回は3D技術で再現したレプリカを展示。江戸後期の岐阜・加納藩士、小川政暢の甲冑(かっちゅう)は岐阜大の所蔵だ。
一方の名大は、千種区の東山キャンパスで発掘された窯跡の資料、1950年代に岐阜県の古墳を発掘調査した際の出土品などを出展している。
名大博物館の門脇誠二教授は「学術標本は研究者が代替わりすると、捨てられたり、倉庫の奥で忘れられたりしてしまうことが多い。だが、学術研究に役立った貴重な資料でもあり、博物館で活用していきたい」と話していた。
入館無料。来年5月6日まで(日、月曜と12月29~1月3日、1月14、15日は休館)。講演会や木曽馬ふれあい会、博物館コンサートなど関連イベントがある。詳細はQRコードから。(鈴木裕)
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