「オーマイガッ」 海外記者が思わずうなった自動車産業の地殻変動

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神山純一
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 長く自動車メーカーの影に隠れてきたサプライヤー(部品メーカー)が、クルマづくりの前面に躍り出てきた。車の価値に占めるソフトウェアの比重が高まり、そこに強みを持つ企業が開発の主導権を握りつつある。一方で、ガソリン車に部品を供給してきた既存のサプライヤーの多くは、存続の危機にひんする。

 主役になるか、消えゆくか――。あまたの企業が、その大分岐点に立つ。

 「ソニーとだから、組むことができる」

 電気自動車(EV)の共同開発で新会社を立ち上げたソニーグループとホンダ。10月13日に開かれた「ソニー・ホンダモビリティ」の設立会見で、ホンダ出身の水野泰秀会長の語りは熱を帯びていた。

 独自路線を貫き、「孤高」の存在と言われてきたホンダ。EVシフトや自動運転の進展を見据え、協業路線へとかじをきりつつあった。とりわけ注目されたのがソニーとの提携だった。

 水野氏は新たなサービスを生み出すためには「ハードとソフトウェアの融合が必要」と語った。これまでの自動車メーカーは「走る・止まる・曲がる」といったハードの性能を主に競ってきた。しかし、まったく新しい価値を持つ車をつくるには、ソフトの力がカギになる、という意味だ。

 ソニーは自動運転技術で「車の目」の役割をもつ「イメージセンサー」を販売し、自動車のハードづくりの一端を担ってきた。それでも、自動車メーカーにとっては、サプライヤーの一つにすぎなかった。そんな力関係は一変しつつある。自動車産業を襲う大波のせいだ。

 ハンドルがなくなり、静かな電気モーターで動く車が、自動で目的地まで運んでくれるようになれば、車内空間の可能性は一気に解き放たれる。「運転する場所」から「コンテンツを楽しむ場所」に変わりうる。

 ソニーはゲーム機「プレイステーション」で会員制サービスを成功させた。音楽、映画など多彩なコンテンツも抱える。インターネット上の仮想空間メタバース」にも先行投資する。こうしたソフトを自動車にうまく結びつけることができれば、サービスを通じて継続的に利益を生む「リカーリング(循環)ビジネス」も期待できる。

 「車の価値観がこれから変わる。ソフトウェアにシフトしていかないと高い付加価値をつくれないし、生き残りも難しくなる」

 水野氏はそう言い切る。クルマづくりの重心が、ハードを得意とする自動車メーカーから、サプライヤーのソニーへと移りつつある。

 1月、米ラスベガスであった技術見本市「CES」でも、ソニーは注目の的だった。

 「オー、マイ、ガーッ」

 海外記者らが思わず驚きの声を上げた。

■「サプライヤーが主役になれ…

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