千本ゑんま堂大念佛狂言 29日に長浜公演
京都市の無形民俗文化財で、千年の歴史を持つ「千本ゑんま堂大念佛(ねんぶつ)狂言」。ほとんどの演目にせりふがあるため初めて見る人にもわかりやすく、軽妙な演技が魅力だ。伝承に努める保存会(京都市)は滋賀県長浜市の長浜文化芸術会館で29日、「千本ゑんま堂狂言IN長浜」を企画。長浜ゆかりの演目「木の本地蔵」など3本を上演し、古典芸能の魅力を伝える。
千本ゑんま堂狂言は壬生(みぶ)狂言、嵯峨狂言と並ぶ京都の三大念佛狂言の一つ。面をつけて演じる。室町幕府の3代将軍・足利義満から「桜の盛りに狂言を行うべし」と、扶持(ふち)米を与えられたという。
戦後、後継者不足で中断し、舞台と衣装が焼失した。存続が危ぶまれたが、有志らが1975年に保存会をつくり、京都市上京区の引接寺(いんじょうじ)(千本ゑんま堂)を拠点に活動し、本公演や依頼公演などをこなす。
今回は保存会と「せんふな会」のメンバーが出演。「木の本地蔵」(25分)は長浜では初公演という。木の本地蔵に参詣(さんけい)に来た座頭は日が暮れたため、お地蔵様のひざ元で泊まることにしたところ、護摩の灰が忍び寄る……との展開だ。
長浜市木之本町の木之本地蔵院に伝わる眼(め)のご利益伝説を交え、優しさが際立つお地蔵様が終盤に詠む一首が見どころになっている。
他の2演目はともに千本ゑんま堂狂言の十八番。
「でんでん虫」(30分)は伯父の長寿の薬にでんでん虫の黒焼きが良いと聞いた大名が太郎冠者に捕まえに行かせようとする。しかし、太郎冠者は見たことも聞いたこともなく……との展開。「土蜘蛛(つちぐも)」(25分)は病の源頼光を家来が見舞う。実は頼光の病気は土蜘蛛の魔力によるものだった……。蜘蛛の糸が舞い、勧善懲悪がテーマだ。
午後1時開演。冒頭で保存会顧問の戸田義雄さんによる解説がある。予定演目の一部は、ユーチューブ(https://youtu.be/F2Wt4Mzmyck)で視聴できる。観覧料は前売り3千円、当日は300円増。チケットの問い合わせは、長浜文化芸術会館(0749・63・7400)。(藤井匠)