高級地鶏がなぜ?名古屋コーチンが動物園のえさになった「苦肉の策」
「えー、うらやましい」
9月のある日、名古屋市東山動植物園(千種区)の食肉小獣舎から、若い女性の声が響いてきた。
ネコ科のサーバルやジャガー、イタチ科のラーテルたちのうなり声も聞こえてくる。
獣舎前にはトレーを持った飼育員がいた。山盛りの肉の塊を順番に与えていくと、獣たちはあっという間に丸のみしてしまう。
えさの肉は、名古屋コーチンのササミ。愛知県が全国に誇る高級地鶏だ。
同園では8~9月、食肉用に加工された名古屋コーチンが、動物たちのえさとして登場した。
えさとなった名古屋コーチンは、鶏肉加工販売会社「南部食鶏」(同市熱田区)が計約310キロのササミを提供したものだ。同園ではえさの寄付は原則受け付けていないが、消費期限内の安全なものであることから、受け入れたという。
名古屋コーチンは明治期に作り出された品種で、比内地鶏やさつま地鶏と並び日本の「三大地鶏」にも数えられる。
弾力のある肉質やかむごとに口の中で広がるうまみが特徴で、値段はブロイラーと比べて3~4倍ほど高い。同社ではササミ1キロあたりの小売価格は約3千円だという。
食肉用に成長するまで約4カ月かかり、ブロイラーに比べて飼育期間も3倍ほど長い。その分、えさ代もかさむ。
そんな高級地鶏をなぜ動物のえさに?
「苦肉の策なんです」
杉本康明社長(46)はそう…