1ドル150円「国力低下を市場に見抜かれている」 元財務官の憂い
歴史的水準まで進んだ円安ドル高。日米の金利差だけでなく、日本の国力の低下も要因だ。政府の為替政策の責任者である財務官を務めた渡辺博史・国際通貨研究所理事長に、日本の国際的な競争力をどう評価し、政府や企業は何をするべきかを聞いた。
――円安が止まりません。どう見ていますか。
「いまの円安は、日米の金利差でもっぱら説明されているが、私は今年進んだ円安の半分以上は日本の国力全体に対する市場の評価が落ちてきていることが要因だと考えている。実際、日本企業をM&A(合併買収)するのに、1年前の実質2割引きであるにもかかわらず、そうした動きはほぼない。日本の企業や産業技術に対する過去に積み上げられた権威がだんだんなくなっている」
「日本はもともとエネルギーや食料を輸入に頼る資源小国で、原材料を買い、日本で加工・組み立て、それを輸出し、生き抜いてきた。ところが、自動車を除けば電機などは海外に抜かれ、IT(情報技術)などの成長分野では米中に後れをとった」
「この10年ほどで日本の貿易収支は赤字が多くなり、投資を含む経常収支の黒字も小さくなってきている。ウクライナ危機でエネルギーや食料問題が表面化し、日本の国力や将来性に対する経済の基礎的条件の弱さを、マーケットが見抜き、為替にも反映されているということだ」
――政府・日銀の為替介入は…
- 【視点】
今必要なのは「国力を高めるための政策だ」という渡辺さんの主張に同感です。私も、「国力低下」の足元を見られる格好で市場に翻弄されているのが現状だと思います。 政府・与党がとりまとめを急いでいる総合経済対策で注目される柱は、物価高騰対策、
- 【視点】
超金融緩和を時間稼ぎとし、製造業のイノベーション力を高めたり、少子化対策を進めたり難題に取り組むはずが、追いつかないままに国力がじりじり下がっている。その足元を見透かされた「150円」だと思います。値段が下がっても買われない。「日本の企業

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