録音に残った労基署職員の言葉 絶望して命を絶った夫へ、妻は誓った

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遠藤隆史
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 座椅子に腰掛けて本を読んでいた男性が、背を向けたまま妻(55)に話しかけた。

 「俺もう何でもいいや」

 「生活には困らないようにするから」

 唐突だった。最初は意味がわからなかった。

 でも、妻の頭にすぐ「万が一」がよぎった。動揺を隠すように、あわてて言葉を返す。

 「何言ってるの、生活なんか大丈夫だよ。馬鹿なこと考えるんじゃないよ」。努めて明るく言えたはずだ。しかし夫は何も言わず、少しすると再び本を読み始めた。

 男性が栃木県鹿沼市の自宅で命を絶ったのは、その日の夜だった。2019年8月21日。まだ50代だった。

 その年の4月下旬。男性は職場で身に覚えのない横領の疑いをかけられ、突然懲戒解雇された。後に詐欺罪で有罪判決が確定する社員が別にいたが、判決によると単独犯で、男性の関与は一切認定されなかった。しかし、当時は職場の社長から「お前も共犯だ」と言われ、警察にも連れて行かれたと妻に話していた。

 今後の生活はどうなるのか。まさか、警察に逮捕されるのではないか。不安が重なり、男性は気分の落ち込みや息苦しさといったうつ病の症状を覚えた。

 職場が原因で精神疾患を発症したと考え、約2週間後の5月7日、労災申請のために鹿沼労働基準監督署を訪れた。

労基署で繰りかえし言われたのは

 男性の妻は、労基署の職員と…

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