想像力を解き放つ絵本 きたむらさとしさん、西宮で原画展
想像をひろげる喜びを色鮮やかに描いた絵本「ミリーのすてきなぼうし」で知られる絵本作家・きたむらさとしさん(66)の原画展が、兵庫県西宮市高松町の西宮阪急4階「えほんのへや」で開かれている。本紙別刷り「be」の人生相談欄「悩みのるつぼ」の、ほのぼのとした挿絵の原画も並ぶ。11月1日まで。
きたむらさんは20代で英国に渡り、新人絵本イラストレーターに贈られるマザーグース賞を1983年に受賞。ロンドンを拠点に約30年間活動し、現在は神戸に住んでいる。
小学2年の国語教科書でも使われている「ミリーのすてきなぼうし」は、英国と日本で2009年に発行された。空想の帽子をかぶり、街を歩く女の子。想像をする度に帽子はクジャクの羽や花束、ケーキ、噴水などに姿を変える。よく見れば街の人々の頭にもいろんな帽子が――。
「アイデアを描きためたスケッチブックにあった、頭上にいっぱい物を乗せている人のスケッチからストーリーが生まれました」と、きたむらさん。「『よく考えてみよう』は、英語では『考える帽子をかぶろう』と表現します。そこもヒントになりました」
きたむらさんは少年時代から絵が大好きで、毎日、空想の乗り物やロボットをわら半紙に何枚も描いていたという。広告や雑誌のイラストレーターを経て絵本作家を志すように。
外国への憧れもあり、渡英して絵を描いては出版社を回った。マザーグース賞に輝いたデビュー作「ぼくはおこった」は、英国の作家の文章を読み作画した。回った出版社のひとつから受けた依頼だった。
「悩みのるつぼ」の挿絵は、連載が始まった09年から手がける。年に数回、集中して数十枚を描き、毎回そこから編集部が内容にあわせて選ぶため、きたむらさんもどの絵が使われるかはわからないのだという。「どんな組み合わせになるか、僕も楽しみながら毎回読んでいます」
こどもたちと触れあうのが楽しいと、きたむらさんは英国で始めた小学校への訪問をいまも続けている。求めに応じて訪れ、紙芝居を見せ、児童に絵を描かせる。顔が入る丸い穴を開けた画用紙を渡し、好きな髪形も描いてもらう。
6月には、神戸市立西須磨小(須磨区)の特別支援学級を訪れた。授業の後、近づいてきたひとりの男の子がきたむらさんに言ったという。「僕の想像力を自由にさせてくれて、ありがとうございました」
きたむらさんは「僕自身は好きなことをやってきただけ。何かを伝えたい、などと考えてきたのではありません。でも、あの男の子の言葉はとてもうれしかった」と振り返った。
原画展は午前10時から午後8時(最終日は同5時)。「ミリーのすてきなぼうし」などの原画約70点の展示のほか、下絵のファイルを鑑賞できる。絵本の展示販売も。問い合わせは西宮阪急(0798・62・1381)。(高松浩志)
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