第1回「娘には秘密に」義母のメールで知った妻の発達障害 悩んだ夫の決断
【A-stories】「ツレ」が発達障害 ふりまわされる、でも愛している
その日、会社員のオサムさん(43)は焦っていた。妻(49)と幼い子どもたち2人をつれて、新幹線で旅行に出かけるところだった。
家を出るのが遅くなり、在来線からの乗り継ぎ時間がわずかしかない。発車時刻が迫っていた。
それなのに妻は、「おみやげを買う」といってどこかへ行ってしまった。
妻を捜しに行き「もう間に合わないじゃん!」と怒ると、妻は「何で怒ってるの? 怖い」。
がくぜんとした。
結局、新幹線には間に合わなかった。旅先の予定も大遅刻となった。
2014年の11月のことだ。
妻はいつもそうだった。時間の感覚がぶっとんでいた。というか、時間の感覚がなかった。
何時にでかける、と決めても、どういうわけかいつも間に合わない。
午後6時ごろになっても、朝ご飯の茶わんは流しに積みっぱなし。炊飯器のスイッチすら押されていない。
おまけに、片付けも大の苦手。家はいつも「いるもの」と「いらないもの」がごちゃまぜになって散乱していた。
真面目できっちりした性格のオサムさんと、明るくおおざっぱな性格の妻。
知人の紹介で知り合い、ほれて結婚した妻だった。
でも結婚から5年が過ぎ、オサムさんのイライラは募っていた。その矢先の、新幹線事件だった。
腹の虫がおさまらなかったオサムさんは、妻の母に顚末(てんまつ)をメールした。
すると、数日後にこんなメールが返ってきた。
「7年前に知り合いの医者に相談したら、発達障害の一種との診断でした」
「娘には秘密にしてください」
義母よりも妻をとった
え? 障害? 発達障害って…
- 【視点】
以前、発達障害を専門とする精神科医から、こんな話を聞いたことがあります。 夫が自閉スペクトラム症(ASD)のため悩んでいる妻を支援しようと「カサンドラ症候群」の患者会をつくったところ、参加した女性の夫のほとんどが診断のつくASDではな